米国e法務ディスカバリーのトレンド

Gibson Dunn法律事務所は毎年 MID-YEAR E-DISCOVERY UPDATE というレポートを発行しています。最新の米国のe法務ディスカバリートレンドを知るのには大変参考になるレポートです。
本レポートによると、2010年と比較して2011年では、e法務ディスカバリー不備に対する制裁が31から68と倍増しています。特に企業内電子データのリーガルホールドと証拠保全を怠ると制裁の対象になってしまいます。全ての電子データをトレースしてアップデートをカストディアンに行い、そのフォローアップして行く事は手間のかかる作業ですが、米国企業の法務部門は社内ポリシーをきちんと確立しておく必要があります。
制裁に関しては裁判所により意図的に電子データを隠匿している場合と、単なるミスで電子データを紛失してしまったケースとで区別している場合があるとの事です。ただし制裁がある事によってe法務ディスカバリーの全体のレベルが上がっている事も事実ですので、制裁の前例から今後のe法務ディスカバリーに対して「ベストプラクティス」の手法を取り入れて行く事が重要です。
傾向としては社外弁護士がクライエント企業に対してE-Discoveryの対処のためにより多くの時間を費やす結果になっているとしています。これはリーガルホールドが適切に行われているのか、また電子情報の「品質」が保たれているのか等を社外弁護士が企業側と密接になってモニタリングをしなければいけないという現状があるようです。つまりアメリカの弁護士はe法務ディスカバリーのプロセスを法務面だけではなくIT面からも理解して企業側にアドバイスをしている事になります。
Predictive Codingはレビュープロセスの前に収集した電子情報を優先順位付ける手法です。無関連電子情報を除外する事によりレビューコストを下げる事を目的としているので大変注目されています。ただ実際にこれが現場ではまだ十分活用されていないようで、本レポートによればPredictive Codingが実際のケースではまだ利用されていとしています。
また2011年になってe法務ディスカバリーがかなり成熟した時期に入ったとしています。ただしそのツールは完璧ではありません。防御性のある手法とツールベンダーの先進的なアイデアを組み合わせたベストプラクティス方式でe法務ディスカバリーをプロセスする重要性が指摘されています。
現在日本ではまだe法務ディスカバリーは本格的には行われていません。アメリカの事例を見るとツールの完成度が年々高くなって来ており、実際日本でそれが行われるようになった際には成熟したツールが応用出来る事になり、アメリカと比べて短期間にハイレベルのe法務ディスカバリーが構築されるではないかと推測されます。

ITを駆使しての効率化

前回はアメリカの弁護士達がiPadとそのアプリで作業効率を上げていると言うお話をさせて頂きました。
iPad だけではなく、Googleも有効に活用する事により効率化を上げる事が可能です。
Google for Lawyers: Essential Search Tips and Productivity Tools」という本が昨年8月にAmerican Bar Association から出版されました。
Googleは無料もしくは低料金で検索とその技術を利用する事ができ、一般的にはあまり知られていませんが、Google Scholar(http://scholar.google.com)という法務検索があります。
ここではリーガルオピニオンやジャーナル、米国連邦裁判所の意見及び州裁判所の意見を検索する事が出来ます。加えて無料アプリケーションであるGmail、 Google DocsやGoogle Calendarまた携帯電話のボイスメールとそのテキスト化をするGoogle Voice 、そして翻訳機能のGoogle Translateなどを有効に利用する事が可能です。
Google for LawyersではGoogleの無料もしくは低価格のアプリとサービスを使って小さな弁護士事務所でも大手法律事務所の調査や技術予算に対抗できるようになる方法、そしてGmail、 Google Docs、Google Calendar、Google Voiceや Google Translateの有効活用、そしてGoogle Scholarを利用したレビューやジャーナルの検索などのGoogleの隠されたツールやその利用方法を解説しています。
このガイドブックではビギナーでもアドバンスユーザーでもGoogleの使い方をマスター出来るようになっています。
アメリカはAmerican Bar Associationが弁護士の効率化を上げるためのITツールを積極的に啓蒙している事が特徴です。
Evernote(http://www.evernote.com)は何でもキャプチャー出来るソフトウェアで、ノートやファイルを整理し、そして後で取り出す事を用意にしてくれるウェブベースのアプリケーションです。モバイル版だけではなくデスクトップ版もあり全てのプラットフォームのシンクロナイズも可能です。
弁護士にとって魅力的なEvernoteの機能は:
1) メールアーカイブ
 重要なメールだけをEvernoteアカウントにアップロード
2) 裁判記録などの保存と閲覧
 Evernoteは裁判記録、意見、記事などを整理して保存するので後での閲覧が可能
3) TO-DOリスト
 1日のやらなければいけない項目を優先順位ごとに管理
4) 証拠保存
 Evernoteは証拠写真などをケースごとに管理
5) コラボレーション
 別の弁護士と情報をシェア
6) ボイスメモ
 モバイルバージョンはボイスメモ機能付き
Evernoteは決して弁護士専用のツールではありません。元々はキャプチャーしたノート、ウェブサイト、記事などを整理して有効活用するという一般的なビジネスユース向けに本来開発されたものですが、こういった便利ツールはアメリカの弁護士も積極的に使っているようです。
アメリカではビジネス向けの効率改善アプリケーションが豊富です。弁護士達はこれらの中から自分のプラクティスにあったツールを積極的に用い、生産性を向上させています。

ITと弁護士の生産性

リーガルサーチのLexis やWestlawが出現した時にアメリカの弁護士達は「コンピュータでの検索など使い物にならない」と言っていたそうです。現在ではコミュニケーションが電子化され、訴訟の際には何テラバイトもの電子保存データを取り扱う事が必要となり弁護士もITの力を使わずに効率を上げることは不可能な状況になっています。
ITの変革が弁護士の活動に影響を及ぼしている事は確実で、特にiPadの出現はアメリカの弁護士の活動に大きなインパクトを与えているようです。四角い革カバンに紙の書類を詰め込んで裁判所に向かう事はもう昔のシーンとなっています。
iPadの一般的なオフィスアプリケーションだけでなく、生産性を上げるのに適した新しいアプリケーションにどのようなものがあるかの情報を常に入手しておく事が重要です。アメリカでは弁護士が自分のプラクティスに適したアプリケーションを効果的に利用して作業効率を上げる事が一般的になっています。
それを反映してアメリカでは弁護士が活用出来るようなiPadのアプリケーションがいくつかありその例をご紹介します。
裁判に関わるスケジュールや期限などの管理アプリ。
ウェブページを保存してオフラインで読めるようにするアプリ。
iPadのタッチスクリーンに対応したドキュメントノートソフトウェア。
リーガルサーチアプリ。
訴訟弁護士向けの連邦/地域ルールなどのリファレンスアプリ。
 
陪審員の席順や各陪審員の情報が入力出来るアプリ。
ノート及び音声録音のアプリ。
裁判でのプレゼンテーションアプリ。
American Bar Associationのウェブサイトでも弁護士の仕事効率を上げるためのiPhoneやiPadアプリケーションを紹介しています。
これらのアプリの数からもアメリカの弁護士を取り巻くIT環境を理解する事が出来ます。
当然セキュリティの心配もありますが、Googleの元CEOであるEric Schmidt氏はMACは最も安全なPCであると述べています。タブレットPCが不発に終わったのとは逆にiPadの爆発的な人気を受けて6,000ものアプリが存在します。そしてより機能的で情報を簡単にコントロール出来るようになりました。
iPadはデスクトップやノートブックPCと異なり情報を「作る」デバイスではありません。あくまで情報を「消費」するデバイスです。既存のPCと並行してiPadを効率的に使うというのが今後の流れのようです。

米国法律事務所のe法務ディスカバリー対応

DLA Piperは最大手の国際法律事務所ですが、あるケースで相手方弁護士からの要求で57万通もの電子文書 (合計67GB)を5日以内にプロセス、検索そして分析をしてケースに関連する文章のみを裁判所に提出するという要請に直面しました。DLA Piper社は今までの経験から全て処理するのに数週間かかると判断しました。但しこれではとても裁判所が提示した期限には間に合わせることが出来ず、高額の制裁措置の対象になる可能性がありました。
DLA Piperは57万通の文章から本案件とは関係のないものと分別するカリングを高速で行えて、なお効率的な検索及び分析が出来るe法務ディスカバリーツールが必要でした。そしてあるツールを即導入し2日間で99.46%の対象外の文章を分別し、3,070通の対応文章を発見する事が出来ました。そしてそれらをPSTフォーマットにエキスポートをし期限内に裁判所の要求に答えることが出来たという事です。
ディスカバリーが「紙」から「デジタル」に移行し、企業が膨大なデジタルデータを取り扱う現在では1案件でテラバイト級のデータを取り扱う事も珍しくありません。特にDLA Piperの例にあるように期日内に関連文章を提出するべく「e法務ディスカバリーの管理」を極めて効率的に行う事が大変重要になって来ました。
米国ではe法務ディスカバリーの要求に効果的に対応する為に、「e法務ディスカバリー部」を設置している弁護士事務所もあります。選任のe法務ディスカバリーに熟知した弁護士が「E-Discovery Practice」を付加価値サービスとして提供しています。
Gibson, Dunn & Crutcher LLPはニューヨークの弁護士事務所ですが、2010年1月にe法務ディスカバリーグループを事務所内に設置しました。
このプレスリリースから下記のポイントが見えてきます:
* 弁護士事務所が率先して効率的なe法務ディスカバリーのイニシアチブを取っている。
* e法務ディスカバリーは法律分野では最も動きが早く発展している分野で2009年だけでも200もの新しいe法務ディスカバリーに関する決定がされている。
* e法務ディスカバリーに関わる電子情報量は増加の一歩を辿っており、そのコストも増加している。クライエントに対して動きの早いe法務ディスカバリーのエキスパートとしてその要求に答えたい。
* e法務ディスカバリーはアンチトラスト、株取引、従業員、集団訴訟などでは必要不可欠なプロセスで法務のノウハウなどと合わせて提供可能になる。
* クライエントに対してはグローバルに分散したデータ保全、収集、処理、レビュー、プロダクションの価格効果の高い手法をアドバイスする事が出来る。
e法務ディスカバリーはITと法務の融合です。「E-Discovery Practice」を行うためには企業クライエントに対して緊急のe法務ディスカバリーに対応する事はもちろんですが、将来的な対応の観点からのアーカイブ、リーガルホールド、社内ポリシー及び効果的なITネットワーク構築も含めたアドバイスを提供出来なければいけません。米国では法律事務所がこのようなITノウハウも含めたサービスを企業クライエントに提供するようになって来ています。

SNSへの対応

世界中に5億人を超えるユーザー数を持つ世界最大のSNSサイトであるFacebook。日本でも300万人以上のユーザーがいるとの事です。
今ではFacebookやTwitterなどのSNSが様々な情報発信源になっているわけですが、これだけユーザー数が増えてその情報量が膨大になると、訴訟に関わる弁護士や事件に対応する司法にとってSNSは無視出来ない存在になっています。
犯罪容疑者のSNSアカウントから事件の糸口となる証拠収集が可能かもしれませんし、不倫が原因で離婚訴訟に至った場合などは、当事者の人間関係がより詳しく把握できるかもしれません。その反面、陪審員制度を持つアメリカでは公判中に陪審員がその内容をSNSにリークしてしまわないかという懸念もあります。
SNSでは情報が不特定多数に瞬時に広まってしまいます。6月にドイツで16歳の女の子がFacebookの設定を間違え誕生日の招待状を誰にも見られるようにオープンにしてしまい、誕生日当日に約1,500人が自宅に詰めかけたという騒ぎがありました。日本でもホテル従業員やスポーツ用品メーカー社員が顧客の情報をTweetして大きな問題となりました。
例えば安全弁の不良に関する訴訟を起されているA社の社員が「私この安全弁の設計をしています。5倍の耐圧設計をしていて絶対安全なので使い続けても問題ありません。」などとTweetしたらそれは大問題になるでしょう。
SNSは企業にとっては悩ましい問題です。米国のトップ100社は訴訟対応の為にe法務ディスカバリーの体制を整えていますが、実際訴訟が起こった際には関係している社員のPC内データだけでなく、SNSサイト、ブログやWiKiなどへの写真、ビデオや書き込みも収集しなければなりません。
PC端末や社内ネットワークのデータ収集はツールを使って可能ですが、SNSからの情報を収集する際には手間が余計にかかる事が想定されます。SNSプロバイダーや携帯サービスプロバイダーなどホスティングされた環境下でのデータ収集も含めたe法務ディスカバリー対応は事前にシュミレーションをして準備してお必要があります。 
また企業としてSNSに対してのポリシーをきちんと確立しておく事も必要でしょう。
1:長いものには巻かれろ
「SNSを使用禁止」にする事は難題です。会社のPCからそのドメインへのアクセスを禁止しても、昼休みにスマートフォンからアクセスすることは禁止できません。SNS禁止ではなく、代わりに社員に対してSNSへのポリシーを策定するべきでしょう。例えば社員がSNSを使って新商品のプロモーションをする時に、その商品が製造者責任訴訟の対象になってしまった場合にそのメッセージが「証拠」として利用されてしまう場合もあります。法務とのコミュニケーションを行い「意見」と「事実」を明確にしてそのポリシーに準じたメッセージにする必要があるでしょう。
2:SNSの有効利用
企業としてSNSを積極的に使い、法務の観点から問題の無いメッセージを発信し、社員に対して「良いメッセージの例」を肌で理解してもらう事も効果的かもしれません。
3:SNSへのディスカバリー対応
社員のポスティングしたSNSが訴訟の対象となってしまった場合には、e法務ディスカバリーへの対応としてSNSから情報を収集、検査そして精査をしなくてはなりません。その場合対象となる社員は個人にはパスワードの提出が必要とするなどプライバシーに関わる問題になります。もしこの社員が協力を拒否したら…その対応で時間がよりかかってしまう事になります。
4:モニタリングとポリシーの実行
定期的にFacebookなどのSNSサイトを訪問し、社員がどういったポスティングしているのかモニタリングをする必要もあるでしょう。もしポリシーに反するポスティングがあればそれを記録し、社員をきちんと指導して会社側がSNSのポリシーをきちんと実行しているという事を明確にしておく必要があります。
「機密情報の外部リーク」という問題は昔からありましたがSNSという誰にでもアクセス出来る新しいツールの存在がそのモラルも変えてしまったようです。企業としてSNSによる情報流出を防ぐ為にはそのメリットを良く理解し積極的に使い、社員とのコミュニケーションを透明化して企業資産を守る事が重要と考えます。

e法務ディスカバリーのミスによる訴訟

米J-M Manufacturing社が内部告発を受け米連邦政府とカリフォルニア州からの調査を受けた際に、同社の弁護士事務所であるMcDermott Will & Emeryは当局に25万のドキュメントを提出しました。
ここまでは良くある話なのですが…
その後J-M Manufacturing社はMcDermott Will & Emery弁護士事務所に対して内部告発案件の際に提出された文章に余分なものが含まれていたとして同弁護士事務所を訴えたのです。J-Mによると本来提出すべきで無い3,900もの弁護士-クライアント間の秘匿特権文章がこの25万のドキュメントの中に含まれてしまっていたとの事。
e法務ディスカバリーのミスに関して案件を担当した弁護士事務所が訴訟されたというケースはこれが始めてのようです。
McDermott Will & Emery弁護士事務所は、Stratify 社(元Iron Mountain社傘下で現在はAutonomy社へ売却)にJ-M Manufacturing社のe法務ディスカバリーサービスを依頼していました。
e法務ディスカバリーは訴訟が増すと共にコスト削減の観点からサービスベンダーにアウトソースされて来ました。担当弁護士はベンダー側のe法務ディスカバリープロセス、使われているツールなどの状況を理解してその管理をきちんとする必要があるのですが、どのような管理方法が求められるのかは各弁護士事務所や担当弁護士に委ねられている状況です。
McDermott Will & Emery弁護士事務所はグローバルで1,000人以上の弁護士を持つ大手弁護士事務所です。J-M Manufacturing社の案件に関して経験の無い弁護士に担当させてしまったのでしょうか?それともサービスを提供したStratify社側の担当者が未熟だったのでしょうか?
e法務ディスカバリーツールの中にはコレクションした電子メールから「弁護士-クライアント間の秘匿特権文章」をドメイン名でフィルタリングをかけて抽出し、「Privileged (特権)」とタグを付ける事の出来る機能を持ったものもあり、こういったミスはツールの選定やドメインフィルタリング機能を理解する事でまた担当弁護士によるチェックがあれば避ける事が可能なのです。
今回のケースから:
1) e法務ディスカバリーサービスプロバイダーをどのような基準で選定するのか?
2) 弁護士事務所によるサービスプロバイダーの提供内容把握とその管理方法の確立
3) サービスプロバイダーによるe法務ディスカバリープロセスの品質管理体制
4) 上記の内容をクライアント側と透明化した情報シェア
5) クライアント側法務部のe法務ディスカバリープロセスの認知度向上
が非常に重要であると再認識しておく必要があるようです。

カルテルとe法務ディスカバリー

自動車部品の販売で価格カルテルを結んでいたとして、公正取引委員会が独禁法違反の疑いで大手部品メーカーの立ち入り検査したというニュースが今週ありました。
昨年2月には米連邦捜査局(FBI)が日系大手部品メーカーの米子会社3社に立ち入り。公正取引委員会はこれらメーカーに計120億円超の課徴金を課す方針を固めています。
日本企業が米国での訴訟に巻き込まれるケースは価格カルテルだけではなく、特許、知的財産、製造者責任や連邦海外腐敗行為防止法(FCPA:Foreign Corrupt Practices Act)などの分野に及んでいます。
米国の企業はFCPAなどの調査に対応してe法務ディスカバリーツールを社内に導入しています。これは50%以上のビジネスが海外で取引されている中で、企業としての透明性を維持する為にはFCPAに関する問題を早期にそして効果的に対処する事が最重要課題だからです。
米国のトップ10に入る大企業であるA社の例ですが、FCPAの調査が多いときで月に2件にもなりました。これに対処する為には既存の社内リソースだけではとてもやりきれない状況になってしまったのです。社内にe法務ディスカバリーのソリューションを持っていないA社はFCPAの調査期限内に対応する事が出来ず、またこれにより通常の業務にまで支障が出てくるまでになりました。複雑なコミュニケーションシステム、また情報の削除により「収賄」がどのように行われたのかを把握する事はe法務ディスカバリーツール無しでは困難を極めていました。
ある案件では7日間の期限内に150GBのデータを分析してFCPAのリクエストに答える必要がありました。ワード文章で1GBのデータ量というのはA4紙で100万ページにもなるのです。この件は現在進行中の1億5,000万ドルもの別の新規ビジネスともリンクしていたので、その対応次第で新規ビジネスのロスにもなりかねない状況でした。
A社はe法務ディスカバリーツール数社を弁護士とのチームで評価をし、最終的にC 社のe法務ディスカバリーツールを導入する決定をしました。C社のツールに決定した理由はそのパフォーマンスもさる事ながら、「e法務ディスカバリーを行う際にIT部門からのヘルプを必要とせずに使える」というものでした。e法務ディスカバリーを行い電子データを分析するのは社内の法務担当者と社外弁護士達で、彼等が簡単に使えるe法務ディスカバリーツールである事が最も重要だったのです。
また今回のケースは中国も関わっていました。英語があまり得意でない中国の弁護士でも簡単に使えるツールだったという事も魅力だったようです。
日本企業に関わる、最近の米国での国際価格カルテル事件では、2008年11月にアメリカ司法省は液晶パネルのカルテルでシャープに罰金115億円、2010年9月に冷却用コンプレッサーのカルテルではパナソニックに対して約41億円の罰金の支払を命じています。
国際価格カルテル事件になるとe法務ディスカバリーが必要とされるのは米国のみならず欧州、日本、アジアにも及ぶ可能性があります。海外展開をする日本企業にとってグローバルなスタンダードの観点からe法務ディスカバリーツールを選択し、訴訟リスクへの対応する事は共通の課題となっています。

データ収集へのアプローチ

訴訟やコンプライアンス対応で電子情報を収集するにあたり、消去されたり破損したデータはフォレンジックを行いデータの復元をする必要があります。そして企業内のストレージに保存されているフォレンジック的に健全なデータを収集するプロセスに入るわけですが、以前のブログではデータコレクションの概要と関連データを消去/改ざんしないように訴訟ホールドするというお話をしました。
訴訟ホールドはe法務ディスカバリーのプロセスの初期段階にあたるわけですが、その次のステップとして必要とされる電子データを収集するのが「コレクション」です。この段階でフォレンジック作業を含めてどれだけ関連する情報が効果的に収集出来るのかがe法務ディスカバリーの防御性、案件の全体像の把握及びコスト、つまりその戦略に影響してきます。今回はそのコレクションへのアプローチに関して触れたいと思います。
「コレクション」では関連するメタデータを収集するわけですが、収集漏れなどのない「防御性」を考慮して案件への関連データだけをターゲットとしたものでなければなりません。企業としてこの関連データを収集をする方法としては、1)自社で行う方法 2)電子ディスカバリソフトウェアを利用の方法が考えられます。
それぞれの収集方法にメリットとデメリットがありますので、実際の訴訟やコンプライアンスの内容により最適な方法を選択する必要があります。
1)自社でデータ収集
社内のIT担当者が関連する電子保存情報を探し、データを法務担当者に転送をするか特定のストレージに保存をします。この手法は最もコストがかからないので企業としては魅力的な手法なのですが、IT担当者に頼る事になるので3つのオプションの中では最もリスクが高いものとなります。れは消去されてしまったデータやネットワークに分散しているデータを「見逃す」可能性が高いからです。またワード文章を開いたりすると、メタデータの内容が変更されたり失われたりする可能性もあります。メタデータの内容変更は情報の改ざんとみなされる可能性がありますので、これは非常に気をつけなければいけません。
その為に社内担当者による人的なコレクションは、担当者がe法務ディスカバリーと法律を熟知していない限り出来るだけ避けたほうが良いというのが、アメリカでは一般的な考えになっています。
2)電子ディスカバリソフトウェア
これは社内のIT担当者が電子ディスカバリーソフトウェアを用いてメタデータが変更されないように収集する方法で、現在アメリカでは電子ディスカバリーソフトウェアを用いての収集が一般的になっています。課題としてはIT担当者が訴訟に対応してのデータ収集に関しての経験が薄い事でソフトウェアを使いきれていない事と、案件が無い時にこのソフトウェアがアイドル状態になり企業側として投資効率が見えにくい事です。また電子ディスカバリーソフトウェアを使うとどうしてもデータを広範囲で収集する傾向になってしまうので、後のプロセスであるレビューの段階で閲覧する資料が多くなってしまうという問題も避けられません。またIT担当者が他の仕事と兼任している場合にはこの収集プロセスや法務部門とのやりとりで専任的な作業になってしまいます。これは企業にとってリソースの負担になるため、そのコストも考慮しなければなりません。
3) e法務ディスカバリーサービスプロバイダー
これはフォレンジックの経験がありe法務ディスカバリーに熟知したプロバイダーに収集を依頼する方法です。消去されてしまったデータの復元をするフォレンジック及び社内のストレージにあるデータの収集を一本化する事が出来るので、案件の全体像が把握しやすくなり、ケース戦略が立てやすくなります。またエキスパートに依頼する事で社内リソースを使った際のリスクを低減する事が出来ます。データ収集はリモート方式と企業のファイヤーウォール内で行うことも可能です。これらサービスプロバイダーはe法務ディスカバリーの専門家なので訴訟やコンプライアンス対応でのリスクを考えると非常に良い選択となります。
4)コンビネーション
コストとリスクを考慮して社内で出来る事は社内で行い、専門分野はサービスプロバイダーに任せるコンビネーションのアプローチも多くなって来ています。この場合は社内のIT担当者、法務担当者、弁護士とサービスプロバイダーのコンサルタントが蜜にコミュニケーションを行いe法務ディスカバリーのプロセスを進めていく事になります。アメリカでこのコンビネーションが増えているのは、e法務ディスカバリーが企業側に運用されてから5年ほど経ちITや法務部門が経験を蓄積して来たのがその理由です。
e法務ディスカバリーでのデータ収集はフォレンジックとストレージのデータ収集の2つがセットになっていますので、訴訟内容により、リスクとコストを両方考慮した方法で行う必要があるでしょう。日本の現状を考えるとe法務ディスカバリーのニーズがある際はまず信頼できるサービスプロバイダーに相談するのがベストであると考えます。

訴訟/コンプライアンスに際してのデータ保全ポリシーに関して

電子ディスカバリが一般的に行われている米国であっても、訴訟に際して証拠として保全(訴訟ホールド)しなければいけない電子データが消去されてしまったという理由で多大な制裁金が課せられた例を以前のブログで紹介させて頂きました。
では電子データをどのように適正に保全すれば良いのでしょうか?Eディスカバリソフトウェアの訴訟ホールドモジュールにデータを入力してソフトウェア任せにすれば良いのでしょうか?
米国でもこのデータ保全に関しては「基準」が無いのが実情です。過去の判例を見てもデータ保全に対する考え方は統一されていません。
Victor Stanley II, 269 F.R.D.ケースを担当したPaul Grimm裁判官は「関連すると思われる証拠を保全する為にどのような手段を取らなければならないかは統一化されていない」とも述べています。
Zubulake v. UBS Warburgケースを担当したShira Scheindlin裁判官は「訴訟に関わる相手方が証拠として集められた電子データをレビュー出来るだけの合理的なステップを踏まなければならない」としています。
Eディスカバリソフトウェアはデータ保全のポリシーがしっかり確立された上で使うことが必要でソフトウェアのみを頼りにする事は出来ません。
日本企業の場合ストレージに限度がある為に定期的にデータを消去しているケースもあるようです。いざ訴訟という事になった場合にはどのような電子データを保全するかが絞り込まれていない場合もあるので、定期的なデータ消去をする行動を全て停止する必要があります。そして関連するカストディアンに対してその通達を合理的に行い、不用意に電子データを消去してしまうような事を防ぐ必要があります。
こういった企業内でのデータ保全に対するポリシーを明確化し、それにきちんと従って行動をしているかのトレイル(足跡)を残しておく事で「合理的なデータ保全の努力をした」という証明が出来ることになります。企業内でデータ保全のポリシーが明確であれば後はEディスカバリーソフトのLitigation Holdモジュールに頼るのは効果的な方法です。
Daynight, LLC v. Mobilight, Inc., 2011 WL 241084 (Utah App. Jan. 27, 2011)の知的財産訴訟で被告側が証拠となる電子保存データを意図的に破損して「default judgment(原告が裁判プロセスを経ずに勝訴)」となるケースがありました。これは被告側が訴訟の後に証拠となる電子保存情報の入ったノートパソコンをオフィスビルの窓から外に投げ出し、その後そのノートブックパソコンを車で轢いたという電子データの保全を全く無視した悪質な行為があった為です。
これは極端な例かもしれませんが、米国で事業を運営している日本企業は日ごろからデータ保全に関するポリシーを確立しておく必要があります。
訴訟は天災と同じで予測をする事が出来ません。米国にて訴訟を起こされたときに、ガードが甘くデータ保全ポリシーの不用意から制裁金が課せられるような事態にならないように、日本企業も普段からEディスカバリーに対してのポリシーを確立しておく必要があると考えます。

e法務ディスカバリのアメリカ動向と日本

e法務ディスカバリ(電子情報開示)の先進国であるアメリカでは、電子データ保存義務を怠ったために、約2,900万ドル(約25億円)にのぼる多額の賠償金が課せられたZubulake v. UBS Warburgのケース以降、e法務ディスカバリの導入が積極的になされてきました。(Zubulake v. UBS Warburg訴訟, 217 F.R.D. 309  S.D.N.Y. 2003)
アメリカでは訴訟時に当事者の情報の開示が要求される「ディスカバリ」自体は紙の時代から行われてきましたが、近年の膨大な電子データに対処するには、専門の電子ディスカバリソフトウェアを利用してデータ保全やその処理などを行う必要があります。
日本も電子データに関わる事件や、日本企業がアメリカでの訴訟に巻き込まれる事が多くなり、e法務ディスカバリへの対応をしなければならない状況となっています。
アメリカではe法務ディスカバリを導入する際には社内弁護士が社外弁護士、訴訟サービスプロバイダ、フォレンジックサービスプロバイダなどと協力して行って来ました。何千もの文章をスキャンして電子化しレビューツールでディスカバリプロセスを行うという事が一般的に行われて来た為です。いわゆるアウトソーシングのモデルです。
2011年はLegal Techでの動向からもe法務ディスカバリは「In-House」つまり企業内にディスカバリソルーションを導入し、ファイアウォール内でデータ処理を行う割合が顕著になると言われています。ある電子ディスカバリソフトウェア企業によると30%程度が政府機関や企業などへのIn-House向けへの販売との事です。
これにはいくつかの理由があります。
1)アメリカ政府機関や企業がe法務ディスカバリに関して熟知してきた。
2)内部でデータ処理可能なものは行いコスト削減行う。
3)センシティブな情報は外部に出さずに内部処理をしたい。
4)訴訟対応だけではなくビジネスプロセスの一部として、e法務ディスカバリを導入。
e法務ディスカバリはITのプロセスではありますが、法務的な判断が最も重要です。e法務ディスカバリは法務部門がリードをしIT部門が協力をする形で行われますが、新しいインターネットのサービス(クラウドやTwitterなど)にどう対応させるかのポリシーは法務部門や弁護士が作らなければならず、最新のインターネットサービスや技術動向を熟知しておく必要があります。
ガートナーの「2011 Magic Quadrant for E-Discovery Software」で上位に位置している電子ディスカバリソフトウェアベンダーを見ると、ECA(早期ケースアセスメント)、使いやすいインターフェイスとサポートでのポイントを多く得ています。ECAは訴訟プロセスの早い段階で実態を把握する事が重要ですが、フォレンジック処理を的確に行い関連電子情報を的確に短時間で抽出する事が必要です。またe法務ディスカバリツールにログオンして使うのは法務部門や弁護士ですので、トレーニングを特に必要としないインターフェイスを持つ使いやすいツールも大切な選択理由となります。サポートとしてはアメリカのe法務ディスカバリベンダーは「プロフェッショナルサービス」と呼ばれる、e法務ディスカバリに熟知した弁護士によるコンサルティングサービスも提供しています。こういった専門的なサポートを提供出来るインフラがあるのもアメリカならではです。
日本でe法務ディスカバリを行う場合は、単にアメリカのツールを導入すれば良いとは限りません。日本独自の携帯内の電子情報収集、フォレンジックのエキスパートによる情報復元及び日本語に対応したEディスカバリツールのサポートを受けられる「信頼出来るエキスパート」とパートナーシップを組みながら、実績のあるe法務ディスカバリツールを使っていく事が重要だと考えます。