第一部 xTECHとワイン「M&Aを支えるVDRテクノロジーとワイン」対談 AOSグループ代表:佐々木 隆仁 & 株式会社Bizval 代表取締役 中田 隆三氏 ここからは対談とさせていただきます。 まず、このCFOサービスですけれども、実際私もいろいろな会社を持っているのですが、一番の悩みがCFOが必要とのことです。やはり上場させようとすると兼務ということは出来なくて、専業で付けてくださいと言われますが、まず間違いなく高いですよね、この分野は。下手をすると会社のコントロールが効かなくなる可能性があり、十両級の監査役とかいろいろ入っていただいた経験があるのですが、手に負えなくなってしまいまして、(上場が)できなかったという経験があるのですが、一番気になるのはCFOサービスの質をどう担保するのか、といったところをお聞かせ願えますか? 佐々木社長のご質問の「質の担保」は二つあるかと思っています。一つはいま我々が実は9割がたは人力で、CFO業務になるようなことを悟ってお答えしているので、我々自身がかなり労働集約的な産業になっていると思っているのですが、ある程度の部分はまだまだなくならないなと思っているので、自分たちのメンバーの質を確保・担保していく。そこに向けていつまでもそんなに人力でやっていくのかというと、目の前にRBAのソフトとか、いいソフトとか、チャットボットのソフトとか、あとはサービスを提供していく中での我々の気づきでもあるのですが、ルーチンな作業、汎用的にどこの会社さんでもここのペインポイントの悩みって一緒だよねとの、そういったものはクラウドの環境の中で、パッケージのソフトを開発していて、事業計画ですとか資本政策ですとか、誰もが使えるものをちゃんとそういうものも開発しながら、寄り添っていくということで質を担保していければと思っています。 つまりxTECHを使って、効率化をしながら質を上げていくという、そういうことですね。 実際うちの「AOSデータルーム」をM&Aに使っていただいたようなんですけれども、その時どのような感じであったか少しお聞かせ願えますでしょうか。 昨年、実はM&Aのアドバイザリー会社にいまして、セルサイドが専門なんです。売却側にいて12件くらいをこなしていたのですが、そのうちの一件が結構大掛かりな仕事でした。12件中12件すべてにVDRを使っていたわけではないのですが、その案件は秘匿性も高いですが、上場企業のM&Aをどういう風に進めてゆくのかと思い、いくつかVDRのツールを見ていました。実際には3社ぐらいのツールを見ていたのですが、先ほど佐々木社長からもご案内があったのですが、直感的なインターフェイス、簡単であり、分かりやすいといったところが意外と、クライアント企業だけでなく、デユーデリジェンスのフェーズになってくると、いろいろな企業の方がそのツールを触ることを想定した場合に、やっぱり、分かりやすい、やりやすいというところを重視したい、そこに重点を置きたいということで、そういうカタチで見たときにAOSリーガルテックさんのVDRが非常に良いと思われました。 このままちょっと実際にどのように使ってゆくかといった点に踏み込んでよろしいでしょうか。 はい、お願いします。 今日、佐々木社長のお話は非常に示唆深くて、情報漏えいをどのように防ぐか?といった、どちらかというとディフェンシブな面の戦略を立てるといった面では、監視ログとか持っているので、変なデータの抜き方とかしてないよねとか、そういう目線とかで、またもし訴訟になってしまった場合、その時刻や触っていた人の状況などが、すべてログとして残っているので、そういうディフェンシブな意味での戦略的活用としては、当然あるものだろうなと思っています。 一方で、我々が実際使っていて本当に面白かったのは、その理由の中で3社ほどの企業が入札で入ってきて、その3社ともがデューデリジェンスのフェーズに入っていったのですが、その3社ともがデータの触り方が全然違うのです。例えば、アカウントを5個解放してくれと、ある会社が求めてきたのですが、実際使っていたのは一人だとか。使っていたのは、そこの一番役職の低い課長さんだけとか。そうなると、こちらとすると課長さんだけが見ていても、当然作業するという面だけみればいいのかもしれないのですが、本当にこのまま承認や決済の権限が取れていくとか、取締役会にかけていただけるようなプロセスを踏めるようなことって起きるのかなと想定して、その札を入れているA社さんというところが、その課長さんだけしか触っていないということが見受けられたとき、我々アドバイザーからするとディールをまとめる、進めるということに価値があると認識していますので、じゃあその課長さんに何かお困りのことはないですかと、ちなみにいつまでにどういったスケジュールやタイムラインで決済にもっていこうとお考えですか?本ケースを進めるにあたってと、そういった問いかけが出来る、というのが一つ特徴としてあるのではないかと思います。 あと二つほど挙げさせていただくと、触っていく中で、例えばデータを1000件くらい格納していたのですが、各社によって(データを)見る重点的なポイントが違うんですよね。ここで、この人たちこのストラテジーを使ってくる可能性が大きいのはのは何でなんだろう?そこの期になる部分というのが、各社によって違いが出るというのが、VDRを活用していて本当に如実に表れていて面白かったですね。 例えば我々が推奨していたストラクチャーが、まあちょっと珍しいのですが、会社分割で新設分割方式というのを採用していたのですが、それは我々側の事情で推奨していたのですが、結論(として)ある会社さんが吸収分割を考えていますと、ああなるほど。それで彼らがどういうデータを見ていくかなあという視点で見てみると、完全に彼らは事業を引き継ぐというよりは、そこに、他の部分に、アセットに魅力を感じている会社さんでしたので、ここの部分だけもらってゆければいいよねということと、そのストラクチャーを吸収分割でといったところで、見ていく資料というのはかなり表面的な資料の見方をしていたなとか、それ以上、逆にデータを見る必要がないくらい、どんどんデータを開放していたのですが、当然この辺は見ないですよねとか、漏えいのリスクを下げてゆくような話、進行の進め方も使えたなとか思っています。結論はそういうディールを進めてゆくにあたって、相手側がどの時点でどういうデータを見ていたのか?加えて入札でしたので、実は一番高い札を入れてくださっていた会社様が、データルームを開放して1週間経っても、データをまったく触っていなかったんですね。これはやる気がないのでは?ということも我々は分かっていたので、交渉をおいてゆくべき、会社、相手というのが、能力によって割くべき会社か、割かない会社かを分けてゆくことが出来るじゃないですか。そういうことの視点で、データルームを活用できるというのは、示唆に富んでいて面白かったと思います。 ありがとうございます。今のお話を聞いていると、まさに会計の知識とテックツールを使って、それを効率化しているのをまさに具現化したような事例ではないかと。我々もお話を聞いて、ああなるほどなと思う面があったのですが、これがこれから進んでゆく道のひとつではないかと思うのですが、我々はツールを提供しているのですが、やはりそのツールをどう使いこなすかというのは、その会計の知識とか、M&Aの知識とか、それをどう生かしていくのかということが入ったときに、もっと効率化もされるし、ディールをクローズさせる力にもなるのではないかと思っています。この「AOSデータルーム」をですね、このような形で使っていただければなと思います。 実際、我々はこの市場に入る前から、バーチャルデータルームのツールというのはたくさんあったので、研究したんですね。先ず、驚いたのがいろいろな扱っている会社さんに聞くと、「使い勝手が悪い」とか、また「マニュアルがないとそもそも使えない」とかですね、あと値段も非常に高いしサポートもあまりよくないとの話を聞いて、我々20年もITのツールを提供している会社としては非常に不思議だったのは、ふつうそんなにお客様の声が上がると、まあ改善されてゆく筈ですが、あまり改善されないので、なんでなんだろうということを思っていろいろ調べていたら、ある時に気がついたのですが、ツールを買うときに誰がお金を払うかというと、大体の場合は買い手じゃなくて売り手なんですね。使うのは買い手。だから見るのは買い手の方が見るのですが、売る方は本音を言えば見て欲しくないんですよ。かといってみせない、開示しないと怒られるから、いれるんですけれども、本音を言えばここは見て欲しくないなとかいうことがあったりとか。要するに使い勝手を良くしてしまうと、却ってよくないという面があってですね、お金払っている人は使っている側ではないので、声が届かないんですね。使い勝手をよくしてくださいと言われても、お客様ではないのでその結果、ちっともツールが良くならない。 今非常に深刻だと思っているのは、特にクロスボーダー案件ですね。日本はもともと海外にM&Aが下手だと言われていて、海外のM&Aでは非常に失敗する事例が多くて、日経を見ていたら大体1-2割くらいの成功率ですね。ご存知の通り日本は少子化が進む中で、成長が止まっている中で、活路を見出そうとしている企業が多い中で、M&Aを上手くやれるツールというものが生まれてこないとマズいんじゃないのかと。そういったことがあってですね、このデータルームというものを開発して、これからもどんどん改善をしてゆかなくてはいけない。今日ご参加いただいたお客様にも何らかの形で使っていただいて、又その声をフィードバックしていただければなと思います。大事なことはM&Aの効率をどう上げるかという話です。我々がツールだけを提供しても出来ないので、いろいろな専門家の方たちと一緒になって作っていかないといいものが出来ないなと感じておりますので、これからはBIZVALさんと一緒にツールを良くしていってですね。例えば今はご存知の通り人工知能の技術が発達していますので、全部は人間が見なくてもいいんですね。技術的にはリーガルテックの技術を入れてゆけば出来るんですけれども、まだまだ一番我々がこれをやっていてマズいなと思うのは、紙文化ですよね。とにかく紙でやっている人たちがあまりにも多くて、紙を使っている限りどうしても効率が上がらない。BIZVALさんも、一人でたくさんの会社さんを抱えようとすると、やはりそこの効率化ということと闘わなければいけないと思うのですが、なるべく紙を捨てて、デジタルトランスフォーメーションしていくことが大事ではないかと思っているのですが、BIZVALさんとしてはどうですか?その辺のところは。 結論は当然ペーパーがなくなってゆくことが望ましいと思っています。ペーパーが無くなることが望ましいと思うのは、やはり業務が効率化ということが出来るからというのがありますね。アメリカの事例を見ていると実は我々は、アドバイザリー業務以外にも、コンサルティングも営業しておりまして、アメリカのリーテックの状況を調べていくと、ちょうどいま佐々木社長からお話が在ったように、完全に皆ドキュサインとか使って、電子証明を使ってぱっぱとやって、数秒で終わるというような。ツールの良さというのはそのような、しかもセキュアな状況でちゃんとやれるんですよね。でも日本とかってどうしても、実はこの前もニュースシックス(?)とか見ていたら、印鑑登録とか、印鑑業者の団体がペーパレスを止めろというような、なんだこの時代錯誤感は?というような話が出たりするというのが、まだまだ全然イケてないなと。効率化できるところを効率化していかないと、人手がいつまで経っても足りないという割には、そういうツールをもっと道理活用していくのかというリテラシーが著しく低いなという風に受け止めているで、我々のお客さんは我々が対峙しているお客さんなんですね。当然こういうツールを使って、効率的にやり取りしていきましょうねという、そういう面にも波及というか影響出来たらいいなと思っています。 はい、ありがとうございます。では、せっかくの機会ですので皆様方から何かご質問などあればお受けしたいと思います。何かご質問がある方はいらっしゃいますでしょうか。せっかくの機会ですので。このサービス本当に大丈夫なのかというようなご質問でも結構です。 では、僕の方から質問したいのですが、M&Aの時にはどちら側から投資をもらうのでしょうか? 我々は基本的にどちらかについているだけなので、セールスサイド、もしくはバイサイドでお客様が売り手になるのか?買い手になるか。昨年やった案件は全てセールスサイド、売却の案件をやっていました。 結構、両方から受け取るパターンと、片方から受け取るパターンと違いがあると思うのですが、どういう風な違いなんでしょうか。 基本的に仲介、まあ違いということになると、仲介業者、ああごめんなさい、仲介という視点に立った時に、先ほど冒頭にも申し上げたのですが、買い手と売り手との間には当然その価格のみならずですね、条件交渉の、例えばどういうものを押していくのかとか、売り手であれば確実に価格がフィックスされた後に、こういうことを保障条項として入れられると困るよねと言うような話が絶対出てくるんですけれども、仲介をしている方々の交渉は、結構クイックにサービスを提供して終わるというようなインセンティブが働いているように、私は思っています。なのでクライアントは本質的に利益相反というようなことを思っているのか、いえないのか分からないですが、基本的には案件が単にクイックに終わって行って、サービスとして提供されるというのは、それは別に間違った話ではないと思うのですが、本質的にディールのプロセスの中で、利益の最大化が行われているかとか、企業価値をどう上げるかとか本質的なところに目を向けられなくなってしまうのが仲介なんじゃないかと僕は思っています。 まあ、ではその戦いにつくときの最大のメリットはその会社の為に最大限努力できるということだと思うんですよね。 あと、値付けなんですけれども。会社の値付けというのは、あれなんなんだろうといつも思うのですが、値段があってなきが如しと、値決めのところってどのようにやっておられるのですか? 困った質問ですね。一物多価のようなところがありますよね。一つのものの見方には、複数の視点があってテキストブック的に言えば、三つの視点でやりましょうねとか、とりあえず、結局は折衷案みたいなものが出て来て。バリエーションレポートなんかを作っていくと、レンジを出してみてなんていうのが通常ですけれども、多くの場合はその価格帯に合理性を見つけて、自分自身がそもそも価格、例えば買い手目線であれば、買った後にどれだけベースが伸びるのかという、伸びしろを見ている筈なので、そこの部分が逆に売り手が分からすると一部でももらえるようなアクションを取っていくというのもすごく大事だなと思ったので、価格がブレるということが悪いということはなくて、どんなふうにこちらが良く見せるか、まあちょっと小手先で言うとよくみせることかもしれないし、本質的なバリューにもし買い手側が気づいていないというようなことがあれば、そこはもともとの案件としてご案内する上で、どういうところがシナジーのポイントになりそうかというストラテジックなところまで踏み込んでいくことで、価格の価値が上がっていくという。それなので、二つあって一つは単体で見たとき、事業単体、会社単体で見たときの価値というスタンドアローンのバリューと、当然その買い手が現れてからの買い手が見る目線からのバリューがあるので、まあかなりそこには差があるのではないかと、経験値からは思っております。 まあそこで折り合いがつかなくなった時にどちらかにつけてやるのかというのが、まあ結構重要なのではないかと思うんですよね。なるべく売る方は高く売りたいし、買う方は安く買いたい。ここが利益相反の一番のポイントかなと思います。どちら側化に付かないと、極大化という意味では力を入れられないですよね。 そうですね。あとはこれもどうなのかとは思うのですが、アドバイザリー業務の成功報酬体系というのが、若干その、目の前にあるニンジンをぶら下げてしまうと、ディールの価格を上げたくなるという心境が生まれてしまうのが、無きにしも非ずだと思いますので、本質的にM&Aの世界ももっとテクノロジーが進んでいくことによって、会計の分野では()や()があることによって、使い勝手のいい部分、使えるところだけを使っていく、今までは金融機関さんとかも様々な業務がバンドリングされていて、それによってワンストップでバリューを出していたという状況があったということですけれども、今後はファイナンスという分野も、アカウンティングという分野も、先行の例がありますけれども、一つ一つの機能分化がされていって、その機能の使いたいところを使っていく、それに対してお金を支払っていくという感じになって行くのではないかと思います。まあM&Aもそういう風になれば良いなと思っています。 まあ、我々ツールを作っている立場で申し上げると、人工知能が発達してくると値付けとかも、ある程度合理的に値段とかが出て来て処理されていったりとか、相場データが増えてくるとですね、合理的に値段が決まる世界になるのではないのかなと、その為にはこういったITツールがもっと発達していかないと効率が上がらないのではないかと思うのですが、ぜひそのあたりを一緒にやっていくことが出来ればと思います。どうもありがとうございました。 ご清聴ありがとうございました。