第二部 「ワイン業界のM&Aについて」 プレミアムワイン株式会社 代表取締役 渡辺 順子氏 皆様、こんばんは。私は「ワイン業界のM&Aについて」お話させていただきたいと思います。 ワイン業界にもM&Aがあるのか?ということなんですが、非常に盛んにおこなわれておりまして、とくにアメリカでは非常に大きく行われておりまして、年間何百億円の取引が行われております。このあとワインをご用意しておりますが、そちらのワインが非常に買収額が大きい金額で取引されたということでご紹介したいと思います。 こちらがメイオミワイナリーと申しまして、後ほど皆様にはテイスティングしていただきますが、何とですね、これが日本円にして約350億円で買収が行われたということなんですね。M&Aに関しては大きく3つのスタイルがありまして、一つはITとか金融で成功し、将来はワイナリーのオーナーになりたいという夢を持って、ワイナリーを買ったというケースも最近増えております。特にIT業界とか金融、そのウォールストリートで活躍されて大成功されてワイナリーのオーナーになった人もいれば、同じ同業者がワイナリーを買うというケースもあります。そうして、もう一つは投資ファンドですね。投資グループがまだまだ小さなワイナリーを購入して、たくさんの資本を入れて大きくしてゆくというケースもあれば、出来たワインを買って寝かせて、そしてそれから大きくなっていくというケースもあります。やはり一番大きく投資が行われているのは、同業者が小さなワイナリーを買うというケースなんです。 ちょっと簡単に今のワイナリーのご紹介をさせていただきますが、ワイオミワイナリーは1982年に生まれた、ジョー・ワグナーさんが、2006年に創業しました。彼がまだ24歳という、凄く若い時期でした。そして、モントレーとか、ソノマとか、サンタ・バーバラで設立をしました。このモントレーとか、ソノマとか、サンタ・バーバラとかは、中と比べて非常に土地がまだ安いところなんです。そこに設立をしまして、最初の年度2006年に設立して、2008年、2009年、2010年なんですけれども、年間3万ケース、一本約25-50ドル。日本円にして約3000円から6000円、7000円ぐらいの金額で売りました。最初の2-3年間に9万ケースを売ったというのは非常に高い伸び率を示したということなんです。高い伸び率に対して、その将来性を買ったというのが、このコンスティレーション社なんですね。そのピノ・ノワールウェーブといわれているのですが、このワイオミワイナリーは、ピノ・ノワールに特化してワインを作ったんです。 今日はですね、ぜひ皆様にピノ・ノワールを飲んでいただきたかったのですが、もうこのピノ・ノワールはほとんど完売しておりまして、今日はシャルドネをご用意しております。でもそのシャルドネも評判がいいのでぜひお楽しみください。アメリカにピノ・ノワールのウェーブ、ピノ・ノワール人気を作ったのは、このワイオミワイナリーなんですね。そしてまた350億円の価値があったのは、ワーグナーさんの醸造スキル、そして知名度、将来性と。2015年には最初は9万ケースだったのが、70万ケースまで販売を伸ばしたということなんです。これは後ほど召し上がっていただきますね。 これはカレラといいまして、皆さんお聞きになられた方はいらっしゃいますか。カレラというのはカリフォルニアのロマネコンティと言われています。なぜそういう風に言われたかと申しますと、ロマネコンティの土壌から気候まで全て計算をして、その土壌や気候にあった場所を探したのです。衛星で全部チェックしたみたいですね。それでその土壌成気候に似た場所を、カリフォルニアから少し上がったところに見つけた。何かそんな中心地ではないのですが、もうちょっと離れたところで土地としては今は高くなっていますが、カレラがオープンした時には全然高くなかったんですね。そしてそこにワイナリーを作りまして、カリフォルニアのロマネコンティと言うことで、発売したら、日本はもちろん世界中でものすごく人気が出まして、それをまた先ほどのコンスティレーション社が22億で買収したということですね。これは2012年でした。こちらはご用意しておりますので、後ほど飲んでいただければと思います。 これがシュレィダーと言いまして、あまり日本の方はご存じないのかもしれませんが、シュレィダーというのはカルトワイン中のカルトワインと言われています。カルトワインというのはどういうワインですか?と言いますと、なんと言いますか、一言で言うと、高いワインなんです。一本5万円から、それ以上30万円、40万円、50万円もするような非常に高いワインをカリフォルニアで作っておりまして、普通のボルドーの歴史あるシャトーよりも高い価格で売られるわけです。どうしてそんなに高い価格が付くかと言いますと、敢えて生産量を抑えて、どちらかというともったいぶって売るんですね。これを飲めるだけでもありがたく思えと。そのようなカリフォルニアの、アメリカの「上から」で販売をしていて、それがアメリカの人たちにはウケまして、ぜひ5万円でも買わせてほしいと、このシュレィダ―に直接オファーがあった。それで大きくはなってはいったんですけれどぽも、未だにこのシュレィダ―はお店では買えないです。直接シャトーからお客様にダイレクトメールで販売する、これはアメリカではメーリングリストと言われているんですが、そのシャトーに自分の名前、住所、もちろんクレジットカードを登録しまして、毎年送られてくるものを、今年はあまり出来が良くないので要らないと言ったら、もうそのリストから外されてしまうんです。だからあまり(出来が)良くなくても買い続けなければならないんです。そういうビジネスの方法を採りまして、66億円で買収されました。年間4000本から、1万本くらいしか作っていないんです。だから66億で買収しても、販売本数からは、なかなかリターンが出来ないのではないかと言われているのですが、ここのワイナリーがどうしてそこまで高い価値を持ったかというと、やはりそのメーリングリストの顧客のリストだったんですね。一本5万でも10万でも、いくらでも買いますよというリストをたくさん持ったんですよ。ですから販売数では決してリターンは出来ないけれども、そのアメリカ国内はもちろん、世界中にいるワイナリーの持っているリストを買ったということで、今一般的には買えないんですけれども、そういうようなM&Aが行われました。 そのワイナリーで、ワイナリーの買収で一番大きいのは、モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトングループです。こちらは今世界中に27のワイナリーを持っていまして、全部で6000億円ぐらいの売上があるのですが、左側がAO YUNというワイナリーなんです。こちらは今中国でものすごく売れているワインでAO YUN、を作るのに、約10年間、歳月がかかったのです。これはルイ・ヴィトングループだからできることだったんですけれども、その中国の広い大地の中からワイン造りで一番適している場所を、10年かかって探し当てて、そこでワイナリーを作りました。中国の広いところでどこだったかと言いますと、シャングリラ(香格里拉)から50-60キロぐらい離れているところで、そこにワイナリーを作りまして、ワイナリーに行くまでも5時間くらいかかりまして、またシャングリラに戻るまで5時間くらいかかるような、何か非常に大変な場所なんですけれども、そこにワイナリーを作りまして、今は幻の1本と言われているくらい大きなワイナリーになりました。 そして右側の写真はちょっと見にくいのですが、シャトーデュケムと言います。これは世界で最高峰の貴腐ワインです。こちらのワインをルイ・ヴィトングループが買いまして、これは一般的にはいくらと言われているわけではないのですが、おそらく500、600、700億くらいだと言われています。そこまでワインには大きな価値があるんだなとは思うのですが。 最後に上のがコンステレーションというアメリカの大きな会社です。こちらはオーパス・ワンとか、モンダヴィとか、大きなところをどんどん買収しておりまして、なぜこんなに買収をしているかと言いますと、例えばスーパーマーケットに行くといろいろなワインが並んでいますよね。その売り場をこのコンステレーション社が全部占領してしまおうという戦略なんです。そうすると高いオーパス・ワンだと、そんなに買える人がいない。だから、スペースとしてはそんなにないかもしれないんですけれども、もうちょっと安いものを2-3種類置いて、もっとやすいものを5種類くらい置いて、ということで、このコンステレーショングループはアメリカのスーパーマーケットのスペースをほぼ独占しておりますね。1社からリターンがあると言うことを見込んでいるわけではなく、アメリカのいろいろな高いものから安いものまで、全部自分の傘下に入れてアメリカの市場を狙っていこうということです。それで今日本にもどんどんコンステレーショングループのワインが入ってきています。 (では、後ほどワインを飲んでいただきますが、今日は非常においしいお食事も用意していただきました。ここでお食事のご紹介をさせていただきます。お願いできますか?)