レポート:不正調査の実務セミナー in 大阪

レポート:不正調査の実務セミナー@大阪

2019年9月4日(水)、リーガルテック株式会社は、MYKアドバイザリー株式会社共済のもと「不正調査の実務セミナー」を大阪駅前第4ビルにて開催しました。

 

講師にはリーガルテック株式会社の佐々木隆仁氏、森田善明氏に、MYKアドバイザリー株式会社の立川正人氏(たちかわ まさと)氏をお迎えしました。

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当日は会場も満席となり、改めて「不正調査」に対する関心の高まりを感じるものとなりました。

本稿では、そのセミナー内容についてレポートします。

かつてないリスクにさらされる日本企業 -佐々木隆仁氏

佐々木氏の話は、日本の現状把握からスタート。

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  • 不適切な会計の開示企業は、2008年の25社から9年間で2.2倍に増えている
不適切な会計
  • 2018年に第三者委員会が設置されたケースは80件で、2017年の43件に比べて倍増
第三者委員会
  • 非正規社員が4割近くに達しており、労働訴訟が増えている
非正規社員
  • 労働訴訟は年々増加傾向。2017年は3,500件を超えた
労働訴訟も増加
  • 労働紛争の相談件数は、2018年は、111万7,983件、11年連続で100万件超え
労働紛争

さらにメガリークとよばれる、外資系企業によるヘッドハンティング経由の情報盗用例も紹介され、企業として改めて対策を打つ必要性が問われます。

「言った言わない」はデジタル証拠には通用しない

多くの内部告発への対応は、「言った言わない」「証拠のあるなし」で揉めることが多いです。
しかし今やほとんどの証拠は電子データで残っています。
悪いことをする人は当然、証拠を消そうとしますが、最先端の技術を駆使すれば、復元可能な証拠も多いです。
本人が消したはずの閲覧履歴で、業務中に趣味のサイトやアダルトサイトを見ていたという履歴が出てきて、裁判で有利に働いたこともありました。
さらに海外にはeディスカバリー法が存在し、もし電子データの証拠隠滅を謀ったことがわかった際には、より大きな罰が科せられます。
データフォレンジックへの対応は、高いリスクにさらされはじめた日本企業にとって、重要な転ばぬ先の杖といえます。

デジタル証拠への備え。アメリカ38%以上。日本1%未満

日本企業でデジタルフォレンジックの準備をできている企業は1%もないのではないかと言われています。
一方で、アメリカの大手企業では、38%は何らかのフォレンジックツールを導入しているという統計調査もあります。
日本企業においても、内部告発や不正会計などが増えてきた今、問題が発生する度に外部業者を頼るのではコストも時間も合わない可能性が出てきています。
アメリカのように、デジタルフォレンジックに対する社内体制を整えないといけない時代が訪れる可能性が高く、今回ご用意したAOSフォレンジックルームは、そのような企業の皆様に使って頂きやすいよう、人的サポートも充実した形でご用意しています。

準備しないなら数十億円の損失を覚悟してください -立川正人氏

企業の第三者委員会などもサポートしているMYKアドバイザリーの立川氏は、ご自身の生々しい実体験をシェアしてくださいました。

不正調査はどう行われるのか

不正調査は、下記のような流れで進みます。

  • 証拠の保全
  • 事実調査
  • 報告書の作成
  • その他関係関係者とのやりとり(会計監査人からの面談を求められるなど)

 

上記のような業務が非常にタイトなスケジュールで進みますが、企業側の人は不正調査時にはじめて見積もりを取るなどの作業に入るため、大変な混乱の中で待ったなしの業務にあたります。

だいたい手遅れ

いざ我々が関与したからといって、すぐに問題が発覚するとは限りません。
むしろすぐにはわかりません。
疑われている人間は、たいてい証拠を消しています。それが実態です。
さらに、我々のようなプロが関わる前に、社内の情報システム部などが勝手に調査をしてしまうため、証拠が書き換わってしまい、余計にややこしいことになっています。
本当は事前に証拠の保全などデジタル調査に関する準備がされていれば楽なのですが、そのような事前準備ができている企業は、上場企業だとしても本当にわずかです。
デジタルフォレンジック協会でも、普段からの準備を推奨しているのですが、残念ながらそうなっていないのが実情です。

6割ものプロがデジタル調査に自信なし

身内の恥をさらすようですが、行政書士など監査関連の関係者にアンケートをとった結果、デジタル調査に関する知識に自信がないと答えた人は6割を超えました。
現代の企業においては、紙で証拠が出てくるよりも電子データに関する証拠の方が多いです。
しかし、デジタル関連の調査スキルを持つ人は驚く程少ない状況なのです。

準備しないなら、数十億円の損失を覚悟する

内部監査など問題があった上場企業のIR資料を読んで頂ければ、企業が費やしている費用がわかります。
少なくとも数億円、一般的には十億円を超える金額が突発的な内部調査にはかかります。
本当は事前にデジタル調査の準備ができていれば、このような外部に頼んで費用がかさむことも、急な激務にさらされることも避けることができます。
AOSフォレンジックルームなどをみてもらえばわかりますが、はるかに安いコストで安心と予防が手に入ります。
どちらにせよ、もしデジタルに苦手意識をもったままで、さらに今後も対策する予定がないならば、それなりのリスクを抱えているということだけは意識しておかれた方がよいと思います。

フォレンジック実務の説明 -森田善明氏

内部監査などを企業から委託され実務にあたっている森田氏からは、フォレンジック業務を内製化するメリットについてが語られました。

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内製化するメリット

多くの企業は内部不正や内部告発のリスクにさらされていますが、意外と気づかれていないのが、調査すると大抵シロ(証拠なしで無罪)だということです。
そう考えると、怪しい行動がある度に外部に高い調査費を払うのは、無駄なコストと時間を支払っていることになり、我々はありがたいですが、あまりオススメはできません。
アメリカの企業がデジタルフォレンジック業務を内製化している理由はまさにそこにあり、経済的な理由からも、初期調査は内部で行える方が理にかなっています。
初動を素早く行うためにも、普段から簡易なデジタルフォレンジックに安く素早く対応できる体制を社内で作ることをオススメしたいと思います。

経験者たちが語る「不正調査」の実態 -司会:佐々木氏 ゲスト:立川氏、森田氏

最後は、実際に企業の不正調査を外部から委託されている3名によるディスカッション。実務者ならではの実感のこもったお話が繰り広げられました。

公平性に対する社会的な意識の高まり

佐々木氏が投げかけた「最近、第三者委員会の案件が増えているように感じる」という質問に対し、立川氏の答えは「そうではない」というものでした。
立川氏曰く、昔から第三者委員会は存在していますし、件数もさほど変わってはいないのですが、社会の意識が高まっているため、注目されつつあるそうです。
社会の意識が高まるということは、より公平な判断が求められるということであり、佐々木社長のリーガルテック社への依頼が増えている背景は、「デジタル証拠」という公平な判断のよりどころを求める機運が高まっているからではないかということでした。
デジタル証拠への注目は、そのような社会的機運を反映したものとも言えそうです。

有事が発生すればゴールデンウィークはない

森田氏からは、内部不正調査などが始まった際には、ゴールデンウィークはないという話がシェアされました。
不正調査のスケジュールが非常にタイトであるということもありますし、eディスカバリーなどは海外企業とのやり取りになるので、当然海外にはゴールデンウィークはないという事情もあります。
さらに、特に日本の製造業においては独自開発したソフトウェアが入っていることも多いので、デジタル証拠を見つけるためには、タイトなスケジュールの中で、環境自体の調査をまず行わないと、不正調査自体が始められないという事情もあります。有事には休んでいる余裕がないのです。
森田氏からのオススメとして、有事が起こる前に複数業者に対して事前見積もりをとっておくことが提案されました。
少なくとも有事が発生する前に、複数の業者に声がけしておくことが、初動の素早さや安心に繋がるということです。

自社を守る

冒頭でも触れましたが、アメリカの大手企業の38%もがフォレンジック業務を内製化している理由は、それが経済的に考えても合理的だからです。
デジタルフォレンジック導入を社内に啓蒙することは、内部犯罪への抑止効果があります。
リーガルテック社は警察の調査を手伝ってきました。これらのノウハウは一般企業にも役立ちます。
日本ではこれからだと思いますが、ぜひ我々が日本の警察、捜査機関にご提供している技術を動員したAOSフォレンジックルームをご活用頂き、デジタルフォレンジック分野においても日本先端企業になって頂ければと思います。