刺身包丁殺人事件(後編)

というわけで、前回のお話の続き。

殺人を犯した犯人のところに突如として現れた警察。片手にはなにやら怪しげな噴霧器を持っています。

警官 「一週間ほど前ですが、この近くで殺人事件がおきましてね」
犯人 「そうですか」

犯人は警官からの質問につっかえつっかえ答えていきます。なにもかも計画通り。こういうことはあまり流暢に喋りすぎると却って怪しまれてしまうので、適当に考え込んだり、そのときの様子を思い出すフリをすることが重要なのです。
警官は犯人の受け答えに何ら疑問を感じる様子もなく、最後の質問を終え、「わかりました。どうも」と言ってその場を去ろうとしました。

警官 「ところであなた、○○色のシャツをお持ちじゃありませんか?」
犯人 「ええ。持っていますが」
警官 「ちょっと持ってきてくれませんかねえ」

犯人はしめたと思いました。
このシャツは殺人のときに着ていたものですが、血はきれいに洗い流してあります。大方警官は目撃情報か何かを元に、このシャツを割り出したのでしょうが、血の跡がなければこっちのもの。同じシャツを着ている人間なんて、この世に何百万人もいるのですから。

警官は犯人が持ってきたシャツをしばらくの間眺めると。おもむろに持ってきた噴霧器でシャツをシュッと一吹きしました。

NO!!!!!!!!!!!

シャツには”あのときの血の跡”がぼうっと青白く浮かび上がってきたのです!!

警官   「これはルミノール薬と言ってね、血に反応する試験薬なんだ。といっても、大量の血が必要ってわけじゃない。ほんの少し。ほんの少しの血さえあればいいんだ。たとえそれが目にみえないくらいわずかな量だったとしてもね」

こうして、完全犯罪だったはずの刺身包丁殺人事件も、ルミノール反応という科学捜査の前に敗れ去ってしまったのです。(END)

…ホントはここで再び、「Stay TUNE!」といいたいところなんですが、それだと何がなんだかわからないので、今日はこのまま最後まで突っ走ることにします。
つまりです。警察で昔から使われていた、この「ルミノール薬」と同じようなことが、コンピュータの世界でも可能だということなんです。えらい長い前置きだったな、おい。

たとえば、ある人が社内の機密データを自分のパソコンにコピーした後、「やばいから」って消したとします。でもこのデータ、実は消えてない。データの痕跡がハードディスクの「どこか」に残っているんです。
だから分かるんです。洗い流したと思った血糊がルミノール薬で青白く浮かび上がるのと同じように、このルミノール薬と同じ機能をもったソフトいわゆるフォレンジックソフトでパソコンをスキャンすれば「消したはずの」データが現われる。

まあ、もっとも、青白い光になってパソコンの画面上に浮かび上がる、というわけじゃありませんがね(笑)。

EDR_1.JPG

パソコンでのルミノール(?)反応。こちらは黄色。