e法務ディスカバリのアメリカ動向と日本

e法務ディスカバリ(電子情報開示)の先進国であるアメリカでは、電子データ保存義務を怠ったために、約2,900万ドル(約25億円)にのぼる多額の賠償金が課せられたZubulake v. UBS Warburgのケース以降、e法務ディスカバリの導入が積極的になされてきました。(Zubulake v. UBS Warburg訴訟, 217 F.R.D. 309  S.D.N.Y. 2003)
アメリカでは訴訟時に当事者の情報の開示が要求される「ディスカバリ」自体は紙の時代から行われてきましたが、近年の膨大な電子データに対処するには、専門の電子ディスカバリソフトウェアを利用してデータ保全やその処理などを行う必要があります。
日本も電子データに関わる事件や、日本企業がアメリカでの訴訟に巻き込まれる事が多くなり、e法務ディスカバリへの対応をしなければならない状況となっています。
アメリカではe法務ディスカバリを導入する際には社内弁護士が社外弁護士、訴訟サービスプロバイダ、フォレンジックサービスプロバイダなどと協力して行って来ました。何千もの文章をスキャンして電子化しレビューツールでディスカバリプロセスを行うという事が一般的に行われて来た為です。いわゆるアウトソーシングのモデルです。
2011年はLegal Techでの動向からもe法務ディスカバリは「In-House」つまり企業内にディスカバリソルーションを導入し、ファイアウォール内でデータ処理を行う割合が顕著になると言われています。ある電子ディスカバリソフトウェア企業によると30%程度が政府機関や企業などへのIn-House向けへの販売との事です。
これにはいくつかの理由があります。
1)アメリカ政府機関や企業がe法務ディスカバリに関して熟知してきた。
2)内部でデータ処理可能なものは行いコスト削減行う。
3)センシティブな情報は外部に出さずに内部処理をしたい。
4)訴訟対応だけではなくビジネスプロセスの一部として、e法務ディスカバリを導入。
e法務ディスカバリはITのプロセスではありますが、法務的な判断が最も重要です。e法務ディスカバリは法務部門がリードをしIT部門が協力をする形で行われますが、新しいインターネットのサービス(クラウドやTwitterなど)にどう対応させるかのポリシーは法務部門や弁護士が作らなければならず、最新のインターネットサービスや技術動向を熟知しておく必要があります。
ガートナーの「2011 Magic Quadrant for E-Discovery Software」で上位に位置している電子ディスカバリソフトウェアベンダーを見ると、ECA(早期ケースアセスメント)、使いやすいインターフェイスとサポートでのポイントを多く得ています。ECAは訴訟プロセスの早い段階で実態を把握する事が重要ですが、フォレンジック処理を的確に行い関連電子情報を的確に短時間で抽出する事が必要です。またe法務ディスカバリツールにログオンして使うのは法務部門や弁護士ですので、トレーニングを特に必要としないインターフェイスを持つ使いやすいツールも大切な選択理由となります。サポートとしてはアメリカのe法務ディスカバリベンダーは「プロフェッショナルサービス」と呼ばれる、e法務ディスカバリに熟知した弁護士によるコンサルティングサービスも提供しています。こういった専門的なサポートを提供出来るインフラがあるのもアメリカならではです。
日本でe法務ディスカバリを行う場合は、単にアメリカのツールを導入すれば良いとは限りません。日本独自の携帯内の電子情報収集、フォレンジックのエキスパートによる情報復元及び日本語に対応したEディスカバリツールのサポートを受けられる「信頼出来るエキスパート」とパートナーシップを組みながら、実績のあるe法務ディスカバリツールを使っていく事が重要だと考えます。