データ収集へのアプローチ

訴訟やコンプライアンス対応で電子情報を収集するにあたり、消去されたり破損したデータはフォレンジックを行いデータの復元をする必要があります。そして企業内のストレージに保存されているフォレンジック的に健全なデータを収集するプロセスに入るわけですが、以前のブログではデータコレクションの概要と関連データを消去/改ざんしないように訴訟ホールドするというお話をしました。
訴訟ホールドはe法務ディスカバリーのプロセスの初期段階にあたるわけですが、その次のステップとして必要とされる電子データを収集するのが「コレクション」です。この段階でフォレンジック作業を含めてどれだけ関連する情報が効果的に収集出来るのかがe法務ディスカバリーの防御性、案件の全体像の把握及びコスト、つまりその戦略に影響してきます。今回はそのコレクションへのアプローチに関して触れたいと思います。
「コレクション」では関連するメタデータを収集するわけですが、収集漏れなどのない「防御性」を考慮して案件への関連データだけをターゲットとしたものでなければなりません。企業としてこの関連データを収集をする方法としては、1)自社で行う方法 2)電子ディスカバリソフトウェアを利用の方法が考えられます。
それぞれの収集方法にメリットとデメリットがありますので、実際の訴訟やコンプライアンスの内容により最適な方法を選択する必要があります。
1)自社でデータ収集
社内のIT担当者が関連する電子保存情報を探し、データを法務担当者に転送をするか特定のストレージに保存をします。この手法は最もコストがかからないので企業としては魅力的な手法なのですが、IT担当者に頼る事になるので3つのオプションの中では最もリスクが高いものとなります。れは消去されてしまったデータやネットワークに分散しているデータを「見逃す」可能性が高いからです。またワード文章を開いたりすると、メタデータの内容が変更されたり失われたりする可能性もあります。メタデータの内容変更は情報の改ざんとみなされる可能性がありますので、これは非常に気をつけなければいけません。
その為に社内担当者による人的なコレクションは、担当者がe法務ディスカバリーと法律を熟知していない限り出来るだけ避けたほうが良いというのが、アメリカでは一般的な考えになっています。
2)電子ディスカバリソフトウェア
これは社内のIT担当者が電子ディスカバリーソフトウェアを用いてメタデータが変更されないように収集する方法で、現在アメリカでは電子ディスカバリーソフトウェアを用いての収集が一般的になっています。課題としてはIT担当者が訴訟に対応してのデータ収集に関しての経験が薄い事でソフトウェアを使いきれていない事と、案件が無い時にこのソフトウェアがアイドル状態になり企業側として投資効率が見えにくい事です。また電子ディスカバリーソフトウェアを使うとどうしてもデータを広範囲で収集する傾向になってしまうので、後のプロセスであるレビューの段階で閲覧する資料が多くなってしまうという問題も避けられません。またIT担当者が他の仕事と兼任している場合にはこの収集プロセスや法務部門とのやりとりで専任的な作業になってしまいます。これは企業にとってリソースの負担になるため、そのコストも考慮しなければなりません。
3) e法務ディスカバリーサービスプロバイダー
これはフォレンジックの経験がありe法務ディスカバリーに熟知したプロバイダーに収集を依頼する方法です。消去されてしまったデータの復元をするフォレンジック及び社内のストレージにあるデータの収集を一本化する事が出来るので、案件の全体像が把握しやすくなり、ケース戦略が立てやすくなります。またエキスパートに依頼する事で社内リソースを使った際のリスクを低減する事が出来ます。データ収集はリモート方式と企業のファイヤーウォール内で行うことも可能です。これらサービスプロバイダーはe法務ディスカバリーの専門家なので訴訟やコンプライアンス対応でのリスクを考えると非常に良い選択となります。
4)コンビネーション
コストとリスクを考慮して社内で出来る事は社内で行い、専門分野はサービスプロバイダーに任せるコンビネーションのアプローチも多くなって来ています。この場合は社内のIT担当者、法務担当者、弁護士とサービスプロバイダーのコンサルタントが蜜にコミュニケーションを行いe法務ディスカバリーのプロセスを進めていく事になります。アメリカでこのコンビネーションが増えているのは、e法務ディスカバリーが企業側に運用されてから5年ほど経ちITや法務部門が経験を蓄積して来たのがその理由です。
e法務ディスカバリーでのデータ収集はフォレンジックとストレージのデータ収集の2つがセットになっていますので、訴訟内容により、リスクとコストを両方考慮した方法で行う必要があるでしょう。日本の現状を考えるとe法務ディスカバリーのニーズがある際はまず信頼できるサービスプロバイダーに相談するのがベストであると考えます。