eDiscoveryの対象となったRAM内データ
eディスカバリー(電子情報開示請求)では、ESIの範囲がどこまで広がるかは大きな関心事だ。
RAMのデータがESI(Electrical Stored Information)として提出対象となった有名な判例がある。
コロンビアピクチャーズがTorrentSpyを著作権侵害で訴えた裁判で、その判決が2007年6月公開されると、驚きをもって迎えられた。
BitTorrentが運営していたサイトTorrentSpy.comは、Torrentファイル向けの人気検索エンジンで、Bit Torrentファイル共有プロトコルでファイルを公開・検索可能にしていた。
判決では、原告側の主張を大幅に認め、TorrentSpyにユーザーのログ提出を命じた。TorrentSpyは、ユーザーのプライバシーを保護するためサーバーなどにも一切ユーザデータは保存していないと主張していた。しかし原告側は、コンピュータのRAMにはユーザー情報が残されているのでそれを証拠として提出するよう求め、それを認める判決が出されたのだ。
RAMのデータは一時的にストアされるだけで、無論その証拠能力、保全性は限界がある。しかしここでは、提出できる証拠は存在しないという主張をRAMの存在が覆したことの意義が大きい。FFとCDTは、RAMはキーボードのキーストロークやデジタル電話システムでの会話まで一時的にストアすることから、この判例の影響が過大になり得ることを懸念し、判決を覆すよう法廷助言書の提出をしたほどだ。
誠実に公正なビジネスを行っている一般企業では、RAMについて、この判例を理由に過剰に神経質になる必要はないだろう。しかし、テクノロジーの進展に伴うビジネスや生活の変化によって、訴訟に伴うESIの概念も常に変化していくことは間違いない。