米国e法務ディスカバリーのトレンド

Gibson Dunn法律事務所は毎年 MID-YEAR E-DISCOVERY UPDATE というレポートを発行しています。最新の米国のe法務ディスカバリートレンドを知るのには大変参考になるレポートです。
本レポートによると、2010年と比較して2011年では、e法務ディスカバリー不備に対する制裁が31から68と倍増しています。特に企業内電子データのリーガルホールドと証拠保全を怠ると制裁の対象になってしまいます。全ての電子データをトレースしてアップデートをカストディアンに行い、そのフォローアップして行く事は手間のかかる作業ですが、米国企業の法務部門は社内ポリシーをきちんと確立しておく必要があります。
制裁に関しては裁判所により意図的に電子データを隠匿している場合と、単なるミスで電子データを紛失してしまったケースとで区別している場合があるとの事です。ただし制裁がある事によってe法務ディスカバリーの全体のレベルが上がっている事も事実ですので、制裁の前例から今後のe法務ディスカバリーに対して「ベストプラクティス」の手法を取り入れて行く事が重要です。
傾向としては社外弁護士がクライエント企業に対してE-Discoveryの対処のためにより多くの時間を費やす結果になっているとしています。これはリーガルホールドが適切に行われているのか、また電子情報の「品質」が保たれているのか等を社外弁護士が企業側と密接になってモニタリングをしなければいけないという現状があるようです。つまりアメリカの弁護士はe法務ディスカバリーのプロセスを法務面だけではなくIT面からも理解して企業側にアドバイスをしている事になります。
Predictive Codingはレビュープロセスの前に収集した電子情報を優先順位付ける手法です。無関連電子情報を除外する事によりレビューコストを下げる事を目的としているので大変注目されています。ただ実際にこれが現場ではまだ十分活用されていないようで、本レポートによればPredictive Codingが実際のケースではまだ利用されていとしています。
また2011年になってe法務ディスカバリーがかなり成熟した時期に入ったとしています。ただしそのツールは完璧ではありません。防御性のある手法とツールベンダーの先進的なアイデアを組み合わせたベストプラクティス方式でe法務ディスカバリーをプロセスする重要性が指摘されています。
現在日本ではまだe法務ディスカバリーは本格的には行われていません。アメリカの事例を見るとツールの完成度が年々高くなって来ており、実際日本でそれが行われるようになった際には成熟したツールが応用出来る事になり、アメリカと比べて短期間にハイレベルのe法務ディスカバリーが構築されるではないかと推測されます。