法務ITとそのトレンド

8月21-25日にテネシー州のナッシュビルでILTA-CONFERENCEが催されました。ILTAはInternational Legal Technology Associationの略でまさしく法務に関する技術を紹介しているコンベンションです。展示ベンダーは300社。これからも米国での法務IT及びe法務ディスカバリーの市場の大きさと法務関係者のITへの興味レベルを理解する事ができます。

毎年1月下旬にニューヨークで開催されるLegal Tech(http://www.legaltechshow.com/r5/cob_page.asp?category_id=71685&initial_file=cob_page-ltech.asp)も法務ITの重要なコンベンションです。

今年のILTAはe法務ディスカバリーベンダー2社が大型買収された後の開催となりました。

5月にはSymantecがClearwellを3億9000万ドルで、8月にはHPがAutonomyを103億ドルで買収しています。SymantecもHPもe法務ディスカバリーの市場のみをターゲットとした商品を展開しているわけではありません。彼らは買収を通じてe法務ディスカバリー市場に参入する意図があるわけですが、SymantecもHPも元々はエンタープライズ向けのソリューションをメインに提供しています。

そのため今後はe法務ディスカバリーサービスを提供しているLitigation Supportやサービスプロバイダーよりもエンタープライズ向けの製品にフォーカスしていくのではないかと言われています。

8月12日のWall Street Journalの記事にもあるように、米国企業は社外弁護士事務所を使わず社内弁護士を積極的に採用していく方向に動いているようです。SymantecとHPによるエンタープライズを中心としたイニシアチブの追い風もあり、米国ではe法務ディスカバリーのIn-House化(企業内で使われる事)が加速していくような気配です。

またこのILTAでは118社の弁護士事務所によるITに関するアンケート結果が発表されています。米国の弁護士事務所がITに関してどのようなアプローチをしているかとても興味深い内容となっています。

ILTAのアンケート結果では、

  1. * 57%の法律事務所が売り上げの2-4%のIT投資をしている
  2. * ソーシャルメディアはLinkedInが多く利用されている
  3. * 33%がクラウドを使った戦略を考慮している(2010年は17%)
  4. * 55%がタブレットデバイス(iPad)を有効活用している

米国のソーシャルメディアは日本と異なり、実名でポスティングされているので信頼度が高くビジネスでも一般的に有効利用されています。特にLinkedInは企業人向けのソーシャルメディアで、米国では自己アピールとビジネスコネクションの両面から広く使われていますが、米国の弁護士もこのトレンドを逃していないようです。

前回iPadの法務アプリに関して触れましたが、米国の弁護士達にはiPadが必要不可欠なツールとなっている事も再確認する事が出来ました。

またクラウド戦略を今後は考慮したい反面セキュリティに対しての懸念もあり、これらを見ても米国の弁護士達がITの最新技術を実務にどんどん応用していきたいという姿勢を持っている事が理解出来ます。

先日のニューヨークタイムズ紙でIT予算を削減するにはクラウドを応用するべきと、元オバマ大統領のITアドバイザーであったVivek Kundra氏は指摘した記事がありました。e法務ディスカバリーの分野でもセキュリティーの懸念事項はありますが、IT予算削減のプレッシャーからもクラウドに移行していく流れには逆らえないようです。