FRCPの事例にみる衝撃的なeディスカバリーの重要性

<Qualcomm 対 Broadcom事件>
Qualcomm社は、ビデオ技術に関する自社の特許を侵害したとして、Broadcom社を訴えた。しかしながら、Broadcomが使用した技術は、JVT SSOと呼ばれる標準規格で各企業が参加して策定したものであり、Qualcommもその規格に参加していた。
問題は、QualcommがJVTに参加したのは、標準規格が設定された後だったと主張していた点である。本来ならJVT参加企業は自社の特許を開示する義務があるが、規格が設定された後であれば、その義務はない。
当初、Qualcommから提出されたeディスカバリーのレポートからは、JVT参加についてのEメールも一切見つからなかったため、訴訟はQualcomm有利に進んでいるように見えたが、Broadcomの訴訟弁護士の尋問により、QualcommでJVTとの連絡をとりあっていたある社員のEメールがeディスカバリーの対象から漏れていたことが判明した。
判事の命令により、その社員のEメールが調査され、20通余りのJVT関連メールが見つかった。その証拠を基に、eディスカバリーのやり直しが命令され、結果として、20万ページに及ぶJVTとの交信メールが検出されるに至った。
結局、地裁は、QualcommがJVTに関しての証拠隠蔽行為があったとして、特許権の行使を無効とし、Broadcomの弁護士費用8億5千万円の負担を命じた。さらに、Qualcommの訴訟弁護士に対し、倫理講義の受講、ならびに制裁を命じた。(2008年カリフォルニア州判決)
本判決は、特にEメールに関してのeディスカバリーの重要性を訴える判例となり、弁護士界には衝撃が走った。