判例:電子ディスカバリーの対応ミスによる、巨額の制裁金

弁護士が訴訟の対象となり、電子ディスカバリーが注目されたケースをご紹介します。
Moreno v. Ostly, No. A127780, 2011 WL 598931 (Cal. Ct. App. Feb. 22, 2011)
Alison MorenoさんはThomas Ostly弁護士の下で働くパラリーガル(法律事務職員)でした。何らかの理由でOstly氏はMorenoさんを解雇したのですが、Morenoさんは「Ostly氏が解雇した理由は、彼との恋愛関係を続ける事を拒否したのが理由」というセクハラ訴訟を起こしたものです。実際この2人は一時期恋愛関係があったようです。
結果から述べると陪審員はMorenoさんへ「Ostly氏に対して155万ドルの賠償金を支払え」との評決をしました。
何故こういう結果になったのでしょうか…
今回のケースで被告側は、関連するメールやテキストをディスカバリーする為にMorenoさんのコンピュータと携帯電話のデータ提出を要求しました。
原告側は対象となる電子データの範囲が広すぎると拒否をしましたが、裁判所は電子ディスカバリーの必要性を認め、コンピュータと携帯電話の提出を要請。その電子データを調査しましたが、コンピュータ内に存在する電子メールにはディスカバリーの対象となる期間のものは存在しませんでした。
また携帯電話は対象期間以降に発売された機種だったのです。つまり原告側から提出されたコンピュータや携帯電話には本訴訟に関連する電子データを何も発見する事が出来なかったのです。
原告側は「現在所有しているコンピュータと携帯電話の提出を求められたのでそれに従ったまで」と回答。被告側から「本訴訟に関連のある期間中に被告は何台のコンピュータと携帯電話を所有していて、それらはどこにあるのか?」と追求され、原告側はしぶしぶ対象期間中にMorenoさんが2台の携帯電話を所有していた事実を明らかにしたのです。
但しその2台の携帯電話は提出が出来ないとの事。1台は破棄されて残りの1台が「不明」との説明でした。裁判官が「どうして最初からこの2台の携帯電話が存在する事を明らかにしなかったのか?」という問いに対し、原告側は「弁護士・依頼者間の秘匿特権」が理由としました。
裁判官は原告側の供述は信用が出来ず、また電子ディスカバリーの証拠開示が不十分として、原告側に被告側の弁護士費用の$13,500の支払いを命じました。その後Ostly氏はMorenoさんを名誉毀損でカウンター訴訟し、最終的に陪審員はMorenoさんに155万ドルの損害賠償をせよという評決を下したのです。
今回のケースは原告側の弁護士が「電子ディスカバリーにおける証拠開示」を甘く見ていたようです。
米国での訴訟では、両サイドの弁護士が「Meet & Confer」という以下のようなプロセスを踏んで、電子ディスカバリーのルール決めをします。それに際して担当弁護士はクライエントの電子データのポリシーに関して十分調査しておく必要があり、企業側もそれに対応出来る体勢になっていなければなりません。
1) 電子データの保存及び破棄のポリシー
2) アクセス可能なデータと不可能なデータの把握
3) 訴訟ホールドとその通達への準備(証拠改ざん防止)
4) 関連電子データが紛失もしくは破棄されていないか
それ以外に訴訟に対して:
1) 訴訟予算の推定
2) 電子データコレクションの期間、種類、サイズを特定
3) 電子データコレクションの方法を決定
4) 重複文章の排除
5) 提出用のアウトプット方式
6) データが収集できなかった際のプラン
などの戦略的な訴訟対応をすべく電子ディスカバリーへの対応をしておく必要があるのです。
企業活動をしている以上、訴訟を避けることは出来ません。企業にとって電子ディスカバリーは大変重要なビジネスプロセスとなっています。