手作業のディスカバリー Vs. e法務ディスカバリソフト

現在、コンピュータやプリンター、コピー機のない企業はほとんど見つけられません。書類や資料を、複写が必要だからと手で書き写す人も、まずいないでしょう。そもそも手作業では長い時間がかかるし、途中で書き間違えでもしたら、一からやり直さなければならないかもしれません。あまりにも生産性が低く、作業効率が悪すぎることは明らかです。
ではe法務ディスカバリに関しては、どうでしょうか? 
大半の企業活動が電子データとして記録されている現代では、様々な電子保存情報(Electrically Stored Information: ESI)を対象とする革新的なソフトウェアを使う事で、情報開示の作業効率を格段に向上させられます。しかし、それにも関わらず、まるで書類を手で書き写すような昔の手法を使ってしまうケースがいまだに見うけられます。
その例としてMultiven, Inc. v. Cisco Systems, 2010 WL 2813618 (N.D. Cal. July 9, 2010) を検証してみたいと思います。
原告であるMultiven社は、本訴訟に関連して膨大な文章をレビューする必要がありました。Multiven社は、e法務ディスカバリソフトウェアを使ってそのプロセスを効率化してコスト削減しようとは考えなかったようです。そして電子ディスカバリーに熟知している外部からのアドバイスも受けず、キーワード検索をして関連文章を絞込む事もせず、5人の弁護士を使い半年以上もかけて膨大な文章をプリントアウトして一枚一枚レビューする「マニュアル方式」を採用したのです。
何故そのようにしたのか、理由は良く分かりませんが、e法務ディスカバリソフトの導入コストや外部サービスのコストを抑えたかったのかもしれません(5人の弁護士に半年間もレビューさせるコストはかなりの額になると思うのですが…)。
いずれにせよMultigen社は「マニュアル手法」でのe法務ディスカバリを選択しました。
ところが何ヶ月経ってもレビューが終わらず、裁判所がMultiven社の「遅さ」でに痺れを切らしてしまったのです。裁判所は数々のケースを処理しなくてはなりません。1つのケースの極端な遅延は他のケースへの対処に影響し、裁判所としての機能に支障をきたす懸念がでてきます。また被告のCisco社も単に待たされるだけになる為、Multiven社にe法務ディスカバリサービスの利用を願い入れていましたが、聞き入れてもらえませんでした。最終的にサンフランシスコ フェデラル裁判所は「マニュアルレビューは常識的な時間の範囲内にそれが完了する可能性が低い」として、Multiven社に電子ディスカバリーのサービスを使うように命じたのです。
Multivens社は、数ヶ月かけた弁護士によるマニュアルのレビューに支払った莫大な費用に加えて、新たにe法務ディスカバリのサービスを使わなければならないという2重の支出となってしまいました。 
もし最初からe法務ディスカバリソフトを使うことにしていたら、このような多額の出費は避けられたはずです。e法務ディスカバリソフトを利用すれば、重複文書、プログラムファイル、関連性の無いドメインからのメールなどを除外し、さらに透明化検索をかけて、収集した文章の85%-90%を除外することが可能です。最終的にレビューをするのは除外した残りの部分、つまり本当に訴訟に関連する文章のみで良いのです。
訴訟に関わる全体のコストの中で60%-90%を占めるのは、レビュー費用とされています。レビューする対象となる文章を極力減らす事が、コスト削減に大きく影響します。
またe法務ディスカバリソフトを使う事で「関連性」や「防御性」が判断可能となり、訴訟への戦略を早期に立てることが可能となります。マニュアルプロセスで数ヶ月かかるレビューが電子ディスカバリーソフトを使うことで数週間のレベルにまで短縮する事が可能なのです。
e法務ディスカバリソフトウェアの導入には、たしかに初期費用が必要です。ですがマニュアルの作業と最新ソフトによる作業を比較すれば、効率面でも戦略面でもソフトウエアが優れていて、しかもコスト的にもむしろ節約になることが多いのです。本ケースはその好例と言えるでしょう。