SNSへの対応
世界中に5億人を超えるユーザー数を持つ世界最大のSNSサイトであるFacebook。日本でも300万人以上のユーザーがいるとの事です。
今ではFacebookやTwitterなどのSNSが様々な情報発信源になっているわけですが、これだけユーザー数が増えてその情報量が膨大になると、訴訟に関わる弁護士や事件に対応する司法にとってSNSは無視出来ない存在になっています。
犯罪容疑者のSNSアカウントから事件の糸口となる証拠収集が可能かもしれませんし、不倫が原因で離婚訴訟に至った場合などは、当事者の人間関係がより詳しく把握できるかもしれません。その反面、陪審員制度を持つアメリカでは公判中に陪審員がその内容をSNSにリークしてしまわないかという懸念もあります。
SNSでは情報が不特定多数に瞬時に広まってしまいます。6月にドイツで16歳の女の子がFacebookの設定を間違え誕生日の招待状を誰にも見られるようにオープンにしてしまい、誕生日当日に約1,500人が自宅に詰めかけたという騒ぎがありました。日本でもホテル従業員やスポーツ用品メーカー社員が顧客の情報をTweetして大きな問題となりました。
例えば安全弁の不良に関する訴訟を起されているA社の社員が「私この安全弁の設計をしています。5倍の耐圧設計をしていて絶対安全なので使い続けても問題ありません。」などとTweetしたらそれは大問題になるでしょう。
SNSは企業にとっては悩ましい問題です。米国のトップ100社は訴訟対応の為にe法務ディスカバリーの体制を整えていますが、実際訴訟が起こった際には関係している社員のPC内データだけでなく、SNSサイト、ブログやWiKiなどへの写真、ビデオや書き込みも収集しなければなりません。
PC端末や社内ネットワークのデータ収集はツールを使って可能ですが、SNSからの情報を収集する際には手間が余計にかかる事が想定されます。SNSプロバイダーや携帯サービスプロバイダーなどホスティングされた環境下でのデータ収集も含めたe法務ディスカバリー対応は事前にシュミレーションをして準備してお必要があります。
また企業としてSNSに対してのポリシーをきちんと確立しておく事も必要でしょう。
1:長いものには巻かれろ
「SNSを使用禁止」にする事は難題です。会社のPCからそのドメインへのアクセスを禁止しても、昼休みにスマートフォンからアクセスすることは禁止できません。SNS禁止ではなく、代わりに社員に対してSNSへのポリシーを策定するべきでしょう。例えば社員がSNSを使って新商品のプロモーションをする時に、その商品が製造者責任訴訟の対象になってしまった場合にそのメッセージが「証拠」として利用されてしまう場合もあります。法務とのコミュニケーションを行い「意見」と「事実」を明確にしてそのポリシーに準じたメッセージにする必要があるでしょう。
2:SNSの有効利用
企業としてSNSを積極的に使い、法務の観点から問題の無いメッセージを発信し、社員に対して「良いメッセージの例」を肌で理解してもらう事も効果的かもしれません。
3:SNSへのディスカバリー対応
社員のポスティングしたSNSが訴訟の対象となってしまった場合には、e法務ディスカバリーへの対応としてSNSから情報を収集、検査そして精査をしなくてはなりません。その場合対象となる社員は個人にはパスワードの提出が必要とするなどプライバシーに関わる問題になります。もしこの社員が協力を拒否したら…その対応で時間がよりかかってしまう事になります。
4:モニタリングとポリシーの実行
定期的にFacebookなどのSNSサイトを訪問し、社員がどういったポスティングしているのかモニタリングをする必要もあるでしょう。もしポリシーに反するポスティングがあればそれを記録し、社員をきちんと指導して会社側がSNSのポリシーをきちんと実行しているという事を明確にしておく必要があります。
「機密情報の外部リーク」という問題は昔からありましたがSNSという誰にでもアクセス出来る新しいツールの存在がそのモラルも変えてしまったようです。企業としてSNSによる情報流出を防ぐ為にはそのメリットを良く理解し積極的に使い、社員とのコミュニケーションを透明化して企業資産を守る事が重要と考えます。