国際カルテル事案への実務対応

9月18日に東京、19日に大阪で「国際カルテル事案への実務対応」というテーマでセミナーを開催しました。

セミナ写真2.jpg

最初は、「国際カルテルなど調査事案に活用されるリーガルテクノロジー」という内容で
AOSリーガルテック株式会社の佐々木 隆仁社長が講演を行いました。

セミナ写真1.jpg

FBIが作成したビデオで、どういう手法で捜査が行われているかを説明されました。
金融の国際カルテル事例として、LIBOR, TIBORの金利不正操作の事例も紹介されました。

国際カルテルセミナー130918.png
LIBOR,TIBORの推移.png

こちらのチャートは、円LIBORとTIBORの推移を表していますが、ロンドン市場で銀行間で
取引される円建てレート、円LIBRと東京の銀行間取引レートのTIBORに乖離があることを
示しています。この2つのレートは、サブプライム危機が起こるまでは、ほぼ、同じような
動きをしていましたが、サブプライム関連の金融商品で欧米の金融機関がばく大な損失を出し
たために、円LIBORの方が邦銀が多いTIBORよりも高くなる傾向がありました。ところが、
2009年春に落ち着きを取り戻してから以降4年間は、TIBORが高止まりしています。

本来は、同じ金利である筈なのに、TIBORが円LIBORよりも高い状態が約4年間続いています。
しかも、これがファイナンシャル・タイムズにTIBORの記事が掲載されてから、低下し始めて
います。世界の基準金利が不当に操作されていないかったのかという疑いが掛けられています。

こういった不正調査を行う場合に電子データが極めて重要な証拠となっています。

パソコンの2014年問題」に関するリーガルリスクについても、説明がありました。

米国では、XPからの移行対策を経営者が怠っているということで株主代表訴訟に発展して
事例もあり、日本においても、2014年問題の対策が不十分で重大な情報漏えいが発生
した場合には、訴訟に巻き込まれるリスクがあります。

ベーカー&マッケンジー法律事務所の井上朗先生は、「国際カルテル事案における電子情報の
重要性について」というテーマで講演されました。

inoue.jpg

井上先生は、10年以上に渡り、カルテル事案に関わっており、先生の豊富な経験に基づいて、
大変、興味深い内容の講演をされていました。

日本企業が国際カルテル事案に関連して米国や欧州で課された罰金額・制裁金額が巨額化して
いるだけでなく、禁固刑 等実刑判決の内容も厳格化していることが近時の顕著な傾向です。

今後もグローバルに活動している日本企業が、米国 及び欧州の競争当局から厳格な取締りを
受けることが予想され、当該日本企業にとっては、国際カルテル事案への具体的 な実務対応を
把握しておくことが喫緊の課題です。

一方で、電子データの証拠収集能力は、飛躍的に高まっており、従来では、調査が難しかった
内容もスマートフォンやパソコンを使ったやり取りを証拠収集することで、立証することが可能となりました。

元CIAの職員で国家安全保障局に勤務していた、スノーデン氏の内部告発によると、2013年の
3月に、米国政府は、合衆国内で月に30億件、全世界で970億件という凄まじい情報を
インターネットで電話回線から傍受していたとのことです。

NSA.png

実際に電話回線から取得した内容は、氏名、住所、通話内容ではなく、電話番号、
通話時刻、通話時間や位置情報などのメタデータだと言われています。

インターネットから収集した情報は、電子メール、チャット、動画、写真、ファイル転送、
ビデオ会議などの情報だったとのことですが、これらの情報が大量に取得され、解析されると、
全世界の人が、どういう行動を取って、何をやっているかをかなり、把握することができます。

これらの証拠データが捜査に活用されれば、従来で不可能だった、カルテル事案も調査が可能と
なります。

多数のお客様にご来場いただき、誠にありがとうございました。

TPPセミナー

6月4日に東京、6月6日の大阪で「TPPに勝つ方法!」

「米国で最先端のリーガルテックから学ぶ知財訴訟対策と経営戦略」というテーマで

セミナーを行いました。

タイトル.jpg

 

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉を通して、米国が狙う最大の目的は、知的財産権に

よる、ロイヤリティ 収入の獲得だと言われています。

これは、TPPへの参加を表明している日本にとっても、極めて重要なテーマです。

知的財産権で収入を得るために、知的財産権侵害を主張し、国際的な紛争解決センターへ

提訴するなどの手続き は避けては通れない経営課題です。 

しかし、知財訴訟に関する訴訟テクニックやリーガルテックを活用した証拠開示において、

日本は、米国に比べて20年は遅れていると言われています。

こ の セミナーでは、ビ ジ ネ ス 訴 訟 を 専 門 と し 、こ れ ま で に 1 , 3 0 0 件 を超 え る

裁判で約 9 1 . 3 % の 勝 訴 率 を 記 録 し て い る ク イン・エマニュエル外国法事務弁護士

事務所東京オフィス代表のライアン・ゴールドスティン米国弁護士

ライアン.jpg

米国で 最先端のリーガルテック技術を有するカタリスト社のジョン・トレデニック社長

ジョン社長.jpg

をお招きして、セミナーを行いました。

AOSは、「TPPと知財訴訟に活用されるリーガルテック」というテーマで講演しました。

佐々木.jpg

スマホやタブレットの急速な普及に見られるようにIT環境の進化が進む一方で、日本は今、

7月からTPP会議への参加を準備しており、グローバルなビジネス環境の変化も急激に

起こっています。グーロバルビジネスが加速していくなかで、デジタル訴訟社会への備えは、

避けては通れない重要なテーマです。

実際に国際訴訟に巻き込まれてしまうと、デジタルデータの証拠開示のノウハウが会社の

運命を大きく左右します。皆様や従業員が普段持ち歩いてるスマートフォンには、何千件

もの通話履歴や写真データ、膨大な位置情報などが記録されています。

このようなデジタルデータは、訴訟の際には、圧倒的な証拠になります。訴訟が起こった

ときに、どうやって電子データを調べて証拠として提出すればいいのか、そのために

リーガルテックをどう活用して、デジタル訴訟社会に勝ち残るのか、これをテーマ

として講演をしました。

TPPとは.png

TPP(環太平洋パートナーシップ)とは、そもそも何かということですが、国際貿易のフェア

なやり方のために自由貿易に支障になる関税の問題を解決するためにウルグアイラウンドが

でき、そのあと進んでWTOが組織され各国の貿易の調整をするようになっているのに何で

いきなりFTAとかTPPが注目されるようになったのでしょうか

関税の問題だけを調整することならWTOでやれますが、実際にかなりアメリカなどの関税が、

下がってるからお互いに話し合って関税を下げるだけならそんなにはメリットがないと思い

ます。

しかし何でアメリカは新たな貿易のやり方を進めて行こうとするのでしょうか

これがポイントです。

サービスビジネスの壁.png 

この真意はものの貿易、つまり、ものの輸出入の協定は、解決できたけどサービスはまだ

だからこのサービスをどのように自由に売って行くかがアメリカの本音だと思います。

サービスビジネスの分野で世界的に競争力を持って、上位に位置するアメリカはサービス

ビジネスに支障になる壁を撤廃することが一番関心が高いということでしょう。

米国の主要品目別輸出入.png

実際に米国の2011年の輸出入統計を見てみると、黒字になっているのは、食料品と

半導体、航空機、医療器具だけですが、全体から見ると、大きな利益を確保することは

難しいということがお分かりになるかと思います。

米国のサービス貿易収支.png

それに対して、サービス貿易の収支を見てみると、年間で約17兆8500億円の収益

を上げており、その中でも、ロイヤリティ、ライセンス使用料は、約8兆4000億円

を稼いでいます。

日本のサービス貿易収支.png

こちらは、2012年の日本のサービス収支ですが、全体では、約3兆1000億円の

赤字ですが、特許使用料等は、約1兆1900億円の黒字となっています。日本にとっ

ても、知的財産権をどうやってお金に換えるか、結局、日本はTPPに参加してアメリカの

要求に応じるしかないと思いますが、そうなるとこれからどうなるのでしょうか?

教育、保険、金融、法律などいろんな分野で新たなルールができビジネスが行われること

になるかと思います。

リーガルサービスの自由化.png

特に、法律サービスの自由化、つまりアメリカのリーガルサービスがグローバルに広

がるようになると今後、国内外にど んな影響があるのでしょうか?

eディスカバリ証拠開示ツール.png

アメリカの民事訴訟では、裁判の前に、当事者同士が、事前に、不利な証拠も、有利な

証拠も全て、開示しなければならないという、ディスカバリに基づいて、公判が実施さ

れます。証拠開示は、これまで、書類が証拠として提出されていましたが、IT革命が進

んだ現代では、ほとんどの情報は、電子化されており、これを受けて、2006年の

12月に連邦民事訴訟規則が改訂されて、訴訟手続き日から120日以内に原告と被告

が裁判所にて会議を行います。ここで、判事が事件の日程とデッドラインを決定します。

この会議に先立ち、21日前までに、つまり、訴訟手続きから99日以内にeディスカバリ

の対象についての事前協議を行います。どのような証拠データが社内のどこに有るか、

そしてアクセス可能かなどの情報を提供します。この時点でこれらのデータが特定出来

ていない場合は、社内の全データが対象になることもあるため、結果として膨大な証拠

開示コストがかかってしまいます。だから、会議の前の99日間がとっても大事な期間

となります。この期間に和解するのか、戦うのかを決める必要があります。

これをECA(早期訴訟評価)といいます.早期に訴訟評価を行うためには、証拠データを

効率良く処理できるリーガルテックの活用が必要となります。電子データの証拠開示に

漏れがあったり、素早く開示できないと、巨額の賠償金を科せられることもあり、電子

データの証拠開示ミスが企業の運命を大きく揺るがすことになります。

米国の訴訟状況を見ると、米国の上位500社が1年間に支払った訴訟費用は、17兆

円にも上ったというデータもあります。米国訴訟全体の12~15%程度の割合で、日本

企業が訴訟の当事者になっています。

eディスカバリの作業工程.png

大量の電子データから、瞬時に必要なデータを処理し、証拠とし扱える形で抽出する法務

ITの技術をリーガルテクノロジーと呼びます。

デジタル訴訟社会とも言える、現代では、この訴訟支援技術、リーガルテクノロジーは、

必要不可欠な技術です。電子証拠開示、データ復元、データ抹消などの技術は、民事訴訟

や刑事訴訟で広く活用されています。

セミナーでは、AOSが今まで手がけてきた、刑事事件、民事事件に使われたリーガル

テクノロジーを紹介させていただきました。

多数の方のご来場いただき、誠にありがとうございました。

LegalTech New York 2013

ニューヨークで開催されたリーガルテックに出展しました。

aosブース1.jpg

LegalTech New Yorkは、弁護士や企業の法務部門、リーガルテクノロジーを提供する企業が

参加する世界最大規模の展示会です。

カンファレンス.jpg

特に、今年は、来場者多く、あらためて訴訟社会米国でのリーガルテックの市場規模の大きさと

熱気を実感しました。

入口.jpg

写真は、初日の出展者向けのカクテルパーティーの様子です。

ロックバンドも呼んで盛大にやっていました。

カクテルパーティー.jpg

AOSのブースは、写楽の浮世絵をキャラクターに使い、

US-Japan & EU-Japan eDiscovery Collectionをメインに展示しました。

ブースアップ.jpg

米国やヨーロッパに進出して、訴訟や不祥事に巻き込まれたしまった日系企業の

eディスカバリのデータコレクション作業を支援することにフォーカスしました。

パネル.jpg

多くの弁護士、eディスカバリコンサルタントなどと交流ができて、大変、有意義なイベントでした。

来場者.jpg

多数のお客様にご来場いただき、誠にありがとうございました。

NRIセキュアテクノロジー主催のセミナー

NRIセキュアテクノロジー主催のセミナーが開催されました。

NRIセミナー全体.jpg

今回は、「インサイダー取引などに対するPCおよびスマートフォンのデジタルデータ証拠調査方法の

具体的ノウハウ」というテーマで講演を行いました。

NRIテーマ.jpg

昨年、金融業界を大きく揺るがした事件は、国内では、大手証券会社の情報漏洩によるインサイ

ダー取引の摘発事件と世界的には国際的な基準金利であるロンドン銀行間取引金利、LIBORの

不正操作事件だったかと思います。

NRILibor.jpg

このLIBOR事件で逮捕された元トレーダーのうち、一人は、東京勤務の経験があり、円建て

取引の担当者だったとされており、ロンドンを主な舞台にした逮捕劇で、疑惑が東京市場に

も波及したと報道されています。この事件では、担当者のメール、チャット、文書ファイル

が重要証拠として提出されています。賠償金の支払い金額も大きく、LIBOR操作に絡む金融

機関11社の罰金や訴訟費用が2014年までに1兆1700億円に上るとモルガン・スタ

ンレーは試算しています。被害を被った政府や企業が金利の不正操作を行った金融機関への

訴訟準備を始めているという報道もあります。一方のインサイダー取引に関しては、今年は、

金融庁などが罰則強化の動きとして、今までは、情報漏洩をしても、直接、株取引で利益を

得なければ罪に問われなかったものを、金融商品取引法を改正して、情報漏洩も罰則の対象

とするかを検討しています。この2つの事件は、日本企業も必ず知っておくべき問題だと思

います。

 

今回は、これらの問題に対して、具体的な事前、事後対策として、

事前対策

1)不要なデータを抹消

2)パソコン、スマホの利用状況を記録

3)機密ファイルのアクセス制限、コピー防止

 

事後対策

1)不正の実態調査

2)訴訟対策

3)再発防止策の策定、実施

 

を紹介させていただきました。

NRI抹消ソフト.jpg

多数のお客様にご参加いただき、誠にありがとうございました。

電子情報・ネットワーク法研究会公開勉強会

11月8日に東京の弁護士会館で弁護士業務に役立つ「インサイダー取引、情報漏洩の事前・事後対策」というタイトルで講座を開催しました。

弁護士会写真1.jpg

題材としては、「インサイダー取引の事前・事後対策」と「アップル、サムスン電子における知的財産訴訟における証拠開示」という2つのテーマで話をしました。

弁護士会写真2.jpg

インサイダー取引に関する話は、こちらで紹介しています。
(参考:http://blog.spectorpro.jp/2012/09/nhkbiz.html)

もう一つのテーマ「アップル、サムスン電子における知的財産訴訟における証拠開示」というテーマで話した内容は、2014年の4月にスマホやタブレットの特許を侵害しているとして、アップルがサムスンを米国で提訴します。これと同時に今度は、サムスンがアップルを日本、米国、韓国、ドイツで提訴して、特許紛争が始まりました。

2011年の動き.PNG
2012年の動き.PNG

こちらは、2012年になってからの主な動きですが、今年の8月に、カリフォルニアの地方裁判所で陪審員による評決でアップルが持つ管理をサムスンが侵害したと認められて、10億5000万ドルという巨額の賠償金の支払い命令が出ました。

サムスンが提出した証拠.PNG

こちらは、サムスンが提出した裁判用の証拠データです。アップルのデザイナーがSONYのデザイナーがボタンなどの過剰な装飾がない、手にフィットする過度に丸みが付いた携帯電子機器のデザインの話をしていたという情報を得て、アップルの工業デザイナーが作成したモックアップデザインです。CAD図面には、SONYのロゴまで入っています。デザイナーによるとこのデザインは、iPhoneプロジェクトのコースを変え、現在のiPhoneにつながったとのことです。つまり、サムスンの主張は、サムスンがアップルのデザインを真似したというが、アップルもSONYのデザインを参考にしたのではないかということです。

アップルた提出した証拠.PNG

こちらは、アップルが提出した証拠データですが、iPhoneのパッケージデザインをギャラクシーのパッケージが真似しているという証拠データです。

【アップルとサムスンの証拠保全義務違反】
アップルとサムスンの訴訟では、証拠データの保全義務違反というのも指摘されました。サムスンは、全てのeメールが2週間後に自動削除されるシステムを導入していましたが、アップルは、侵害通知をサムソンに行った2010年8月時点で削除を停止して、証拠保全を行なわなかったのは、証拠隠滅を図ったもので、証拠保全義務違反に当たるとして、制裁を求めました。これに対して、裁判所も一度は、この訴えを認めましたが、これ対して、サムスンは、アップルも証拠保全義務を果たしていないと主張し、裁判所もアップルが自社に不利な証拠を破棄した可能性があると認めて、双方の主張が無効となりました。

【アップルとサムスン評決、グーグルの意向示すメールが決め手】
陪審員が10億ドル余りの巨額の損害を認定するときに判断材料としたのがグーグルからサムスンの幹部に送られていた電子メールだと報道されています。グーグルの幹部がサムスンに対して、アップルのiPhoneにあまりにも似ているのでデザインを変えた方がいいというメールが証拠として提示されて、このメールにより、サムスン側もギャラクシーがiPhoneに似ているということを認識していたという証拠となったとのことです。このように電子データが評決に大きな影響を与えています。

これは、米国での訴訟なので、eディスカバリの対象となります。eディスカバリとは、米欧の民事訴訟や行政調査、審理の当事者に向けた電子情報証拠開示のための手続きルールです。米国では、2006年にFRCP(連邦民事訴訟規則)で厳密な運用が明文化され、このルールが守れない場合には、制裁金、および訴訟においてのペナルティが課せられるようになりました。訴訟や行政調査の当時者は、証拠開示の要求に答える義務を負います。アップル、サムスンの訴訟に関して、様々な証拠データが法廷に提出されたというニュースが流れていましたが、ここで開示されたデータがeディスカバリにより開示が義務付けられたデータを含んでいます。

EDRM.PNG

実際のeディスカバリの証拠開示は、EDRMという電子情報開示参考モデルに従って進めていきます。企業にとっては、電子データの証拠開示をどういう風に進めるか、どういうツールを使ってどのように調査するかが思案のしどころになると思います。

企業不祥事・国際訴訟における事前・事後対策セミナー

8月24日に大阪で「企業不祥事・国際訴訟における事前・事後対策」というタイトルでセミナーを開催しました。

不祥事セミナー.jpg

金融庁におけるインサイダー取引に対する罰則強化の動きや、米国連邦民事訴訟規則の改正の動きなど、企業を取り巻く法的リスクが高まっている中で、最近の事例を踏まえた具体的な事前・事後対策を各分野の専門家がご紹介するという内容で行いました。
山口利昭弁護士とAOSテクノロジーズの佐々木隆仁社長と上智大学特別研究員の北村浩先生が講師として、以下の内容で話をしていただきました。
・企業不祥事と社内調査の進め方~社内調査委員会外部支援の経験から~山口利昭先生(山口利昭法律事務所 弁護士)山口利昭先生には、社内調査委員会などで企業を外部から支援したご経験を元に企業不祥事と社内調査の進め方を具体的に話していただきました。

23b99bea10e4db4140e77a8913ddca76-1.jpg

不祥事に対して自浄能力が求められる企業が具体的に、リスク管理の視点から何をしていけばいいのか、役員の訴訟リスクにどう対処すればいいのか、社内調査をどうすすめていいのかなどのポイントを具体的にご説明されていました。
また、社内調査にフォレンジックを活用することでどういう成果が上がっているかなどを具体的な事例を交えて講演されていました。内部不正に対して効果のある対策として、経営者は、重要情報が特定の職員のみがアクセスできるように管理する仕組み作りが一番大事だと考えているが、従業員は、社内システムの操作の証拠が残ることが一番大事だと考えているなど、従業員と経営者で大きな意識ギャップがあり、不正対応で重要になるのは不正の痕跡を見つけるデジタルフォレンジック調査である。
しかし、実際にフォレジック調査では、証拠改竄、証拠削除などのも起こるため、専門業者と協業して調査をしていくことが必要となります。また、弁護士の観点から社内調査行う上で人権への配慮も大事であるというお話もいただきました。
・インサイダー取引などに対する、デジタルデータ証拠調査方法の具体的ノウハウ佐々木隆仁(AOSテクノロジーズ株式会社 代表取締役社長)

佐々木隆仁社長2.jpg

AOSテクノロジーズの佐々木隆仁社長からは、今年に入って、大手証券会社からの情報漏れにより発生したインサイダー取引が次々と摘発されており、このままでは投資家の日本市場離れを招きかねないということで金融庁は、インサイダー取引の罰則強化について議論を開始し、関連法案を来年の国会に提出しようと準備を進めているというお話や、現行の金融商品取引法では、インサイダー取引を行なった者に情報を伝達しただけでは罰則の対象にならなったものが、相次ぐ不祥事の再発防止のために、米国や欧州連合のように情報漏洩も罰則の対象に加えることを検討しているという動きがある。
このような動きを受けて、インサイダー関連の情報漏洩の予防対策はどのように実施すればいいのか、実際に問題が発生した場合の調査はどのように行えばいいのかを、デジタル証拠データ復元技術などをご紹介しながら、具体的にご説明いただきました。インサイダー取引に関連する情報漏洩対策としては3つの対策がある。

  1. 1) 不用意なデータは、抹消ソフトを使って、完全に抹消するデータは、削除されていても復元されることがあります。不要なデータは、専用の抹消ソフトを使って、定期的に抹消する。抹消ソフトの詳細はこちらです。
  2. 2) ログ管理ソフトを導入して、パソコン、スマホの利用状況を記録する操作ログの記録を取ることで、不正調査を迅速に行うことが可能となり、記録されていることを従業員に告知することで不正抑止効果も期待できる。ログ管理ソフトの詳細はこちら(http://logkanri.jp/)です。
  3. 3) 情報漏洩防止ソフトを社内のシステムに導入する機密ファイルのアクセス制限、コピー防止などの機能を備えた情報漏洩防止ソフトを導入することで、情報漏洩を防止する・知財・民事の海外訴訟対策(eDiscovery対策) ~ “Predictive Coding”によるコンプライアンス・ビッグデータ対応の視点~上智大学の北村先生からは、eディスカバリの最新手法となるPredictive Codingについてお話していただきました。

北村浩先生.jpg

日本企業は、米国・欧州での有事の際に生じる経営リスクを極力抑制するために、行政当局、裁判所や訴訟相手からのeDiscovery(電子情報開示)について効果的な対策を講じることで、コンプライアンス情報の管理力を発揮することが必須になっています。その中でも、これまで高コスト負担であった人間系主体の作業、特に、文書レビューについて、いかに可視的な効果を導くかが問われており、eDiscovery対策の変革を示すことが重要になっています。
有事の追跡対象となるコンプライアンス分野の膨大な社内文書について、eDiscoveryにおけるリーガルレビューの前処理として、”Predictive Coding”(予測符号化)を適用することで、有事に関係する文書を重み付け、種別ごとに分類し、レビューの工数減と品質確保を支援するリーガルテクノロジーを紹介します。
この手段によるeDiscoveryの推進が、レビューのコスト軽減と一定以上の均質化によって、経営リスクの評価をより容易にし、有事対策の有力な手段として活用を検討する企業がなぜ増加しているのかをご講演されました。当日は、非常に多数のお客様にご参加いただき、誠にありがとうございました。

開場の様子.jpg

申し込み総数が定員をオーバーしたため、急遽、開場を大きなものに変更しましたが、それでもご参加できない人が多数おりましたので、急遽、追加でセミナーを開催することといたしました。

  1. 講演:【大阪開催無料セミナー】      企業不祥事・国際訴訟における事前・事後対策
  2. 日時:平成24年09月14日(金) 13:30~17:30 (受付開始13:00)
  3. 場所:[大阪]TKP大阪御堂筋カンファレンスセンター ホール3A大阪府大阪市中央区淡路町3-5-13創建御堂筋ビル3F・8F
    【地図】https://www.kashikaigishitsu.net/facilitys/cc-osaka-midosuji/access/
    【アクセス】地下鉄 御堂筋線「淀屋橋駅」より徒歩3分  地下鉄 御堂筋線、中央線、四つ橋線「本町駅」より徒歩4分
  4. 講演スケジュール:プログラム1企業不祥事と社内調査の進め方~社内調査委員会外部支援の経験から~
    【講師】山口利昭 氏(山口利昭法律事務所 弁護士)プログラム2インサイダー取引などに対する、デジタルデータ証拠調査方法の具体的ノウハウ
    【講師】佐々木隆仁(AOSテクノロジーズ株式会社 代表取締役社長)プログラム3知財・民事の海外訴訟対策(eDiscovery対策) ~ “Predictive Coding”によるコンプライアンス・ビッグデータ対応の視点~
    【講師】北村浩 氏(上智大学特別研究員(Ph.D.))
  5. 参加費:無料(事前にお申込ください)
  6. 定員:50名※定員制のため、満席でお受けできない場合もございます。予めご了承下さい。※お申込み者が定員を超えた場合は、抽選とさせて頂きます。予めご了承下さい。
  7. 主催:レクシスネクシス・ジャパン株式会社 ビジネスロー・ジャーナル
  8. 後援:AOSテクノロジーズ株式会社

▼お申込み・詳細はこちら▼
多数のお客様にお申込みいただき、誠にありがとうございました。本セミナーのお申込みは締め切らせていただきました。

同様の内容で10月5日に東京でもセミナーを開催する予定です。

e法務ディスカバリーのコスト

9月13日のForbes誌にe法務ディスカバリーのコストに関しての記事がありました。
e法務ディスカバリーベンダーによる「ギガバイト当たりの価格」設定は見直しを迫られているようです。
e法務ディスカバリーを社内インハウスのソリューションとして導入する際には「ギガバイト当たりの価格」で見積もり提示がされる事があります。通常ここで言われる「ギガバイト当たりの価格」はコレクションすべきデータからプログラムファイルなどを除いたデータに対して適応されます。ただしこの場合コレクションされたデータの中にはまだ除外すべきデータも多く含まれている可能性があり「ギガバイト当たりの価格」が適応される事に疑問を投げかけるケースが多くあるようです。

さらに読む

リスクアセスメント

前回はe法務ディスカバリーは訴訟対応だけではなく、ビジネスプロセスの一部として利用されているとお話しました。そのプロセスとしては電子保存情報をネットワーク内から収集してレビューを行う事になりますが、アーカイブされた情報を取り出したり、OCRや、検索するためのインデックスをしたりするステップを事前に踏む事になります。
ただ最も重要なプロセスは収集したファイルがウィルスやマルウェアに侵されていないかをスキャンして確認しておく事です。それが確認された後でデータを隔離してログ管理を行わなければなりません。またマルウェアの除去に際しては技術的にオリジナルのファイルを改ざんしないかの確認が必要です。いずれにせよ収集した電子情報に対してはマルウェア対策をきちんと行う事が重要です。
e法務ディスカバリーは一般的に訴訟、コンプライアンスや内部調査で電子保存情報を収集しEDRMプロセスを行う事と考えられていますが、基本的には「リスクアセスメント」を行う事です。

さらに読む

HPの戦略

HPが e法務ディスカバリーツールベンダーのAutonomyを買収した事は先週少し触れましたが、その背景を少し考えてみました。
HPがAutonomyの買収をするとリリースしたと同時にWebOSデバイスの販売中止とPCビジネスの切り離しを発表しました。ここからHPはコンシューマ向けからエンタープライズ向けにフォーカスをするという、IBMが行ったと同様の戦略が見えて来ます。
1) WebOSの中止はAPPLEとの競合には勝てないとの判断から。
2) PCビジネスの切り離しは利益が出ないため。
  IBMはPCビジネスを切り離し後にLenovoに売却。
3) Autonomyの買収にもあるように今後はソフトウェアとサービスにフォーカス。
HPはAutonomyをその売り上げの11倍の価格で買収しています。SymantecはClearwellを売り上げの8倍の価格で買収しているので、HPがいかにAutonomyを傘下にしたかったのかが見えて来ます。
8月19日のフィナンシャルタイムスの記事では、Autonomyをe法務ディスカバリーツールベンダーとはカテゴリーしておらず、「エンタープライズ情報プラットフォーム(Enterprise Information Management)」としています。
HPからのプレスリリースでもAutonomyは「Business Solution」とされていて「E-Discovery」という表現はされていません。
「Autonomy brings to HP higher value business solutions that will help customers manage the explosion of information. Together with Autonomy, we plan to reinvent how both unstructured and structured data is processed, analyzed, optimized, automated and protected. 」
アメリカ企業は効率を上げるソフトウェアツールとして営業部門はSales Forceを、人事部門はSuccess Factorを導入していますが、法務部門はe法務ディスカバリーをビジネスプロセスの効率化ツールと位置づけて導入している事が理解出来ます。
e法務ディスカバリーには基本的に2つのカテゴリーがあります。

さらに読む

法務ITとそのトレンド

8月21-25日にテネシー州のナッシュビルでILTA-CONFERENCEが催されました。ILTAはInternational Legal Technology Associationの略でまさしく法務に関する技術を紹介しているコンベンションです。展示ベンダーは300社。これからも米国での法務IT及びe法務ディスカバリーの市場の大きさと法務関係者のITへの興味レベルを理解する事ができます。

毎年1月下旬にニューヨークで開催されるLegal Tech(http://www.legaltechshow.com/r5/cob_page.asp?category_id=71685&initial_file=cob_page-ltech.asp)も法務ITの重要なコンベンションです。

今年のILTAはe法務ディスカバリーベンダー2社が大型買収された後の開催となりました。

5月にはSymantecがClearwellを3億9000万ドルで、8月にはHPがAutonomyを103億ドルで買収しています。SymantecもHPもe法務ディスカバリーの市場のみをターゲットとした商品を展開しているわけではありません。彼らは買収を通じてe法務ディスカバリー市場に参入する意図があるわけですが、SymantecもHPも元々はエンタープライズ向けのソリューションをメインに提供しています。

そのため今後はe法務ディスカバリーサービスを提供しているLitigation Supportやサービスプロバイダーよりもエンタープライズ向けの製品にフォーカスしていくのではないかと言われています。

8月12日のWall Street Journalの記事にもあるように、米国企業は社外弁護士事務所を使わず社内弁護士を積極的に採用していく方向に動いているようです。SymantecとHPによるエンタープライズを中心としたイニシアチブの追い風もあり、米国ではe法務ディスカバリーのIn-House化(企業内で使われる事)が加速していくような気配です。

またこのILTAでは118社の弁護士事務所によるITに関するアンケート結果が発表されています。米国の弁護士事務所がITに関してどのようなアプローチをしているかとても興味深い内容となっています。

さらに読む