電子ディスカバリーソフトウェア上位5社
/カテゴリ: eディスカバリー, 最新米国情報シマンテックがクリアウェル・システムズ買収
/カテゴリ: eディスカバリー, 最新米国情報「セキュリティー用ソフトウエアメーカーで最大手の米シマンテックは、非公開企業の米クリアウェル・システムズを約3億9000万ドル(約318億円)で買収することに合意した。法律情報の管理システムを取得する。」5月19日(参考【ブルームバーグ】:http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920008&sid=a73P2jokccOU)先週、シマンテックが電子ディスカバリーソリューションを提供しているクリアウェル・システムズを買収するというニュースがありました。クリアウェルはセコイヤキャピタルなどからベンチャー投資を受けた米国シリコンバレーの企業。設立は2005年で従業員約200人、売り上げ約5000万ドル(約40億円)。
クリアウェルはEDRMの全てを単一アプリケーションでプロセス出来るソフトウェアが強み。元々はプロセシングモジュールからスタートしましたが、レビューモジュールなどを追加し、最新バージョンではコレクションやリーガルホールドのモジュールも組み込んでいます。今回のシマンテックによる買収額は売り上げの約8倍です。
同じ電子ディスカバリーソリューション企業で上場しているガイダンス・ソフトウェアは、売り上げは約1億ドル(約80億円)とクリアウェルの倍ですが、現在の時価総額は約1億9000万ドル(約150億円)。売り上げをベースに計算すると、クリアウェルの時価総額は、ガイダンスの4倍という事になります。
シマンテックがプレミア価格でクリアウェルの買収をしたのは;
- 1) 電子ディスカバリーとアーカイブ製品とのシナジー電子ディスカバリーにおいてアーカイブ機能が充実されていればより効率的な対応をする事が可能。シマンテックのEnterprise Vaultとのシナジーでより効率的な電子ディスカバリーソルーションを提供出来る。
- 2) 安定した電子ディスカバリーソリューションの提供顧客のサービス用やエンタプライズ向けなど、電子ディスカバリーソリューションを提供している会社は数百社。但し米国のように電子ディスカバリー市場が成熟化してくると、顧客は訴訟やコンプライアンスに対応する為に長期的に使え、サポートが充実し、経済的に安定したプロバイダーからの導入を希望するようになる。クリアウェルは従業員200人で400社のカスタマーを持ちこの業界で土台がきちんと出来た企業である事に加え、シマンテックという一流ブランドが今後安定した電子ディスカバリーソリューションとして相乗効果を出していく事になる。
- 3) 法務部門へのアクセス電子ディスカバリーはLegal-ITとも言われ、法務部門とIT部門向けの融合したソルーション。シマンテックはIT部門に対しては非常に強いが、法務部門には弱い状況。その環境の中でEnterprise Vaultを推し進めて行くのは非常に難しく、クリアウェルの買収により法務部門へのアクセスとそのプロセスに熟知したタレントを手に入れる事が出来る。
などの理由が考えられます。
シマンテックとクリアウェルではリーガルホールドやコレクションなど重複する機能もあるので、今後両社がどうインテグレーションして市場展開をしていくかが期待されます。
訴訟ホールド(Litigation Hold/Legal Hold)に関して
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/カテゴリ: eディスカバリー, 最新米国情報今回はGreen v. Blitz U.S.A., (E.D. Tex. Mar. 1, 2011)のケースをご紹介します。製造物責任訴訟に於いて、被告(Blitz USA社)は原告(Greenさん)とすでに和解をしていたのですが、2年後の別の訴訟に於いてBlitz社側がe法務ディスカバリのホールドをきちんと行っていなかった事が判明し、裁判所から「露骨なディスカバリー侵害をしていた」として、すでに和解をしていたGreenさん側にも25万ドルの制裁金を支払うように命じたものです。
http://www.ediscoverylaw.com/uploads/file/Westlaw_Document_Green(1).doc
被告であるBlitz社はガソリン容器の製造メーカー。原告のGreenさんは、彼女の夫がBlitz社の製造したガソリン容器を取り扱い中に爆発事故で死亡したのは、被告の製造したガソリン容器に「火災防止機能」が無かったからだとした訴えましでた。最終的に被告側が原告側に和解金を支払うことで、この訴訟案件は2年前に終了していました。
ところが、最近になってBlitz社が起こされた別の製造物責任訴訟で、Blitz社が「関連する電子メールの削除をするように」と従業員に社内通達していた事が判明したのです。
裁判所は、Blitz社が訴訟申請があった際に適切な「Litigation Hold(訴訟ホールド)」をしてデータを保全する義務を怠った、とも判断しました。Blitz社が行った「Litigation Hold」とは、ある担当社員が関連すると思われる従業員達に「電子データを探してくれ」とリクエストしただけでした。IT部門に電子データの適正な抽出の方法などの相談もしていなかったので、その結果、社内電子データへの検索などがされませんでした。さらにBlitz社は、関連したメールを削除するように社員に命じてもいました。
裁判所はBlitz社が「意図的にe法務ディスカバリの義務を無視して、訴訟の鍵となる電子文章の提出を怠った」と判断しました。
実際、Blitz社内にはガソリン容器に「火災防止機能」を取り付けなければ危険だという認識があり、それに関する電子メールでのやりとりがされていたのです。
また裁判所は「e法務ディスカバリをきちんと行うという意思をもってキーワードサーチを行えば、関連電子メールの抽出は可能であった。しかしBlitz社の担当者は、IT部門へe法務ディスカバリをどう行うかの相談もしていなかった」との認識を示したのです。
Greenさんの担当弁護士はその事実を知り、和解から2年経ていたのですが、Blitz社に対するケースを再びオープンにするように裁判所に申請をしたものです(推測ですが、和解金をより多く得たいという目的があったのかもしれません)。
裁判所はすでに完了した訴訟を再度オープンする事は出来ないとして再審請求を却下しました。但し民事制裁金として25万ドルをGreenさんに支払うようにBlitz社に命じたのです。
このケースの特徴は、訴訟のため社内でのデータ収集をする際に、e法務ディスカバリのプロセスを全く知らない従業員が対応したことです。これは絶対に犯してはいけない間違いです。これはまるで、ロープの上を安全ネット無しに歩くと同じことです。
社内データを収集する時には、その収集の仕方、キーワードなどを透明化し、e法務ディスカバリツールを用いてそのプロセスを「防御」出来るようにしておかなければなりません。短期的な視点から、コストのかからない社内リソースのみで対応した結果、長期的には制裁金が課せられてしまった訳です。
e法務ディスカバリに「100%完璧」はありません。但しe法務ディスカバリを知らない従業員にデータ収集を任せる事ほど高いリスクはありません。
企業にとって、e法務ディスカバリツールは「安全ネット」とも言えるかもしれません。